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沖縄の盆、独自の文化学ぶ 稲福政斉さん、那覇市民講座で由来や供え物を解説 焼香のタイミングも


沖縄の盆、独自の文化学ぶ 稲福政斉さん、那覇市民講座で由来や供え物を解説 焼香のタイミングも 旧歴7月と8月の行事について講話する稲福政斉さん=7月27日、那覇市小禄南公民館
この記事を書いた人 Avatar photo 藤村 謙吾

 【那覇】那覇市民講座「旧暦7月、8月の行事―シチグヮチ(盆)を中心に―」が7月27日、小禄南公民館であった。県文化財保護審議会専門委員で、「『御願じょうず』なひとが知っていること」などの著作がある稲福政斉さんを講師に、約50人が受講した。旧暦7月から8月の沖縄の行事とその意味、本土の盆との違いや、盆の由来と歴史、盆の供え物について学んだ。

 7月の行事では、沖縄では墓を掃除し先祖を迎える準備をするタナバタと、県内では全県的に旧暦で行うシチグヮチについて語った。祖霊を家に迎えるウンケーは、奄美では墓まで祖霊を迎えに行く事例を紹介した。お盆が農耕儀礼だった名残から、ナカヌヒー・ナカビでは、麦で作ったソーメンを食べる家庭が多いことや、ウークイのエイサーや獅子舞は、祖霊の送りだけでなく、ウンケーで先祖の霊についてきた悪い霊を追い払うため、夜にすると解説した。

 近年、ウークイの祖霊を送る焼香が早くなっていることに触れ、「遅ければ遅い方が良い。ぎりぎりまで(祖霊を)引き止める気持ちが大事だとも言われた」と取材体験を交えて語り、受講者の笑いを誘った。

稲福政斉さん

 8月は「お盆で来た悪い霊を払うために拝む」行事が多いと説明。爆竹などを鳴らして邪気を払ったり、地域によってはガン(ひつぎを運ぶ輿(こし))に対する祭祀(さいし)儀礼を行ったりするヨーカビーや、屋敷内の邪気を払うヤシチヌウグヮンを紹介した。

 シチグヮチの供え物に関する項目では、父や母などに例えられることが多い「果物」について「意味はない」とし、「(盆は)収穫を感謝する儀礼なので、そのとき採れたものを供えた」と語った。

 お盆のごちそう「ジューバク(重箱)、ウジュー(御重)、ウサンミ(御三味)」は、豚と鶏、魚からなる中国式の供え物「ウサンミ」をベースに、沖縄の人たちが好きなものを入れるようになり、今の形になったと説明した。ソーローハージ(メドハギ)の葉や枝で作る祖霊用の箸「ソーローメーシ」、祖霊が土産物を頭上に載せ運ぶ際に用いる「ガンシナー」など、11種の供え物の意味を一つ一つ丁寧に解説した。

 受講した神谷吉隆さん(67)は「幼いころ、母に『ソーローハージをお願い』と言われて取りに行ったが、どの植物か分からないまま違うものばかり取ってきて、よく叱られた。大人になってもどの植物か分かっていなかったが、メドハギのことだと知って、すっきりした。細かな部分まで説明があり、勉強になった」と話した。

(藤村謙吾)