【宮古島】小型の美しいセミで宮古島市天然記念物のツマグロゼミについて、市上野新里の増殖施設内での羽化および個体の確認数が、2018年からの7年間で、最多だった19年の3690匹と比べて約87%減少し、今年は464匹だったことが分かった。7月19日、市教育委員会から羽化記録業務を委託されている佐渡山安公さんが市歴史文化資料館で記者会見し、調査結果を報告した。老朽化している増殖施設の改築ととともに、近親交配対策、ツマグロゼミが好むイスノキの植栽を課題に挙げた。
調査は毎年、羽化が見られる5月中旬から6月末にかけて行われている。増殖施設のみで確認した個体数の推移は、19年をピークに、長雨の影響で激減した22年を除いても、20年1842匹、21年1008匹、23年512匹と減少を続けている。
24年は調査を終了した6月30日現在で、上野新里の増殖施設で464匹、豊原ウナトゥ地区で新たに確認された生息コロニーなどで510匹の計974匹が確認された。
今年の羽化も施設の建物内では確認できず、464匹は敷地内での確認だった。
佐渡山さんは「(施設が)老朽化で網やトタン屋根が破れ、機能を果たしていない」と指摘するとともに、近親交配対策ではウナトゥ地区と施設内の個体間による掛け合わせの必要性を強調した。
新たにまとまった個体が確認されたウナトゥや近接する地域は、ツマグロゼミが生息しやすいというイスノキが民家で大木になっているほか、畑の防風林として植栽された数十本が大きく成長したことが好影響したとみられる。ただ、防風林に関しては根元に枯れ葉や雑木が堆積し、幼虫の生息に影響があるとして、佐渡山さんは市教育委員会などの関係者による対応を求めた。
ツマグロゼミは中国、台湾、宮古と八重山の先島に分布し、宮古島が北限となっている。全長4センチほどで青緑とだいだい、その中間の3色のタイプがある。前翅(ぜんし)先端に暗色紋があることが名前の由来。毎年5、6月の梅雨時期に羽化し、「シーッ、シーッ」の鳴き声を響かせる。島内では上野新里や近接する城辺の砂川と友利などに生息する。環境省レッドデータブックで「絶滅の恐れがある地域個体群」に指定される。