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出会いが作曲を後押し フルーティスト 津崎このみさん(東京都在住) 11月、那覇市で初コンサート <県人ネットワーク>


出会いが作曲を後押し フルーティスト 津崎このみさん(東京都在住) 11月、那覇市で初コンサート <県人ネットワーク>
この記事を書いた人 Avatar photo 斎藤 学

 明かり一つない真っ暗な夜。外気に身をゆだねて耳をすますと、そよ風が稲穂を揺らした。コンサートへ出演するため昨秋訪れた愛媛県東温市。柔らかな風が頬をなで「あの景色を記憶として曲に残したい」と東京に戻って思い立った。脳裏に風景のメロディーが響き渡って、作り上げた曲が「風のほほえみ」。流麗な曲調が、その日に見た景色を人々に思い浮かばせる。

 「小さい頃から県外に出たいと思っていた」。好奇心は旺盛。「いろんなものを見てみたい」と気持ちははやり、高校卒業後の上京に迷いはなかった。

 音楽の道を志し教育体制を吟味して進んだ大学。「朝5時に始発の電車で学校に向かい、練習室を確保する。授業を受け夜の10時まで練習。毎日がその繰り返し」。真面目の手本とも評価されるような生活を送った。

 両親の後押しもあってできた学生の時間。酔っぱらって路上寝する学生を見ると「いいなぁ」。緩みかねない気持ちも一瞬もたげたが「朝から晩まで練習に費やせる時期は今しかない」と自らを戒め、学んだ。

 一筋に音楽に向き合った学生時代も、卒業も控えると焦りが出てきた。音楽の学びを生かす道は限られる。「この後どうしたらいいだろう」

 そんな時、進路に迷いつつ、人々との出会いという幸運に恵まれた。「それまではクラシックが専門。ある時、舞台音楽やポップス曲を書く人と出会い、レコーディングやライブサポートに呼んでくれるようになった。本当にラッキーだった。そして最近になって曲を作るようになった」

 上京してはや14年。振り返ると「楽しいことばかり」。見るもの、触れるものが学生時代から真新しい。「沖縄にいたら出会わない人と出会える。東京はいろんな人がいる。戦って頑張る人を見ると刺激になる」。とはいえ、連日全力投球では気も休まらない。心の支えは故郷。「沖縄に生まれ育って良かったなと思う。家族も友人もいる」。浮かぶ光景の一つは海中道路と言う。いつしかメロディーを奏でるかもしれない。

 11月17日に自らが企画する初めてのコンサートを那覇市で開く。フルートをメイン楽器として歌と合わせる音楽の新境地。「フルートをもっと使える楽器に。自分を発信できるライブをして、みんなにいい時間と空間を届けたい」

 (斎藤学)


 つざき・このみ 1991年7月生まれ。うるま市出身。普天間高校卒業後に上京。桐朋学園芸術短期大学卒業。専攻科、研究科修了。アーティストのライブサポートなどを行う。CDもリリースする。