西武から国内フリーエージェント(FA)権を行使してソフトバンクへの加入が決まった山川穂高内野手(32)が19日、ペイペイドームで記者会見し、自身の不祥事について改めて頭を下げて謝罪し「マイナスからのスタートになる。新人のつもりで全力で頑張りたい」と述べた。4年契約で年俸は推定総額12億円プラス出来高払い、背番号は25。
スーツ、ネクタイとも黒色で神妙な面持ちで登場した。球団は同日午前11時に入団を発表し、2時間後に小規模の会場で会見と異例の対応となった。山川は5月に強制性交の疑いで書類送検され、8月に嫌疑不十分で不起訴処分となった。西武からは無期限の公式試合出場停止処分を科されたが、ソフトバンクの処分はない。
右の強打者を求めていた球団は騒動の背景を調査するチームをつくり、山川の代理人、本人とも接触した。三笠杉彦ゼネラルマネジャーは「深く反省している。来季のプレーにも影響がないと判断した」と語った。
通算218本塁打を誇る山川は「今まで培った実績をゼロにする。これまで以上に自覚を持ち、責任のある行動を取りたい」と話した。
「妻が励ましてくれた」一問一答
ソフトバンクに加入した山川は硬い表情を浮かべ、決意を語った。
―今の気持ち。
「身が引き締まる思い。自分がしてしまったことに対する反省の日々を過ごしていた」
―不祥事に厳しい言葉も。
「当然のこと。野球で結果を出して許してほしいとは思っていない。根本から変わるしかない」
―家族の支え。
「妻が励ましてくれた。もう裏切ることは絶対にしない。僕の母親と妻とで引退するかどうかの会議もした。妻は『任せる』と言ってくれた」
―西武への思い。
「感謝しているし、お世話になった。ファンへのあいさつはここで述べたことになってしまう。そこは申し訳ない」
―意気込み。
「例年の自分であればリーグ優勝、ホームラン王を取る、という気持ちで臨んでいた。まずは今日という日を迎えられたこと、一歩ずつ踏み出していくことを大事にしたい」
孫オーナーや王会長も承諾
ソフトバンクは不祥事を起こした山川について、王球団会長と孫オーナーの承諾も得て獲得に踏み切った。王球団会長は「チャンスがあるのはいいこと。世間や野球ファンに認めてもらえるかどうかは彼の頑張り次第」とコメントした。
記者会見に出席した三笠ゼネラルマネジャーは孫オーナーから「ホークスとしての判断を尊重する」と伝えられたことを明かした。小久保新監督は「一員となった以上、野球に打ち込める環境を整えるのが監督の仕事」と戦力アップを期待した。
不可欠な右強打者補強 調査徹底、熟考の末獲得
主力に左打者が多いソフトバンクにとって、右の強打者の補強は不可欠だった。不祥事やその処分による実戦感覚の欠如と、本塁打王3度の実績をてんびんにかけても高く評価。一方で山川に対する世論の風当たりは強く、球団は入念に調査し、親会社も熟考を重ねて獲得を決断した。
3位に終わった今季の打線は中軸を形成した柳田、近藤、中村晃ら1~6番まで左打者が何度も並んだ。右の長距離砲として期待された若手や外国人選手も精彩を欠き、2年間率いた藤本博史前監督は退任会見で「右が5番くらいに入らないと」と吐露した。
球団は山川が実戦復帰した秋季教育リーグにスカウトを派遣し、状態を確認。関係者によると不祥事についても、同様の事案がないかなどを徹底的に調べたという。獲得する方針は変わらなかったものの、発表は山川がFA権の行使を表明してから約1カ月後だった。
大きな注目を集める中でも本来の実力を発揮できるか。既に球団にはファンらから批判的な意見も寄せられているというが、後藤芳光球団社長兼オーナー代行は「彼が真摯(しんし)に向き合うことは前提で、反省からの挑戦を許したい、と考えた」と話した。
(共同通信)