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宮本、日本新で4位 重量挙げW杯 通過点、視線はパリ五輪


宮本、日本新で4位 重量挙げW杯 通過点、視線はパリ五輪 ジャークを成功させる男子73キロ級の宮本昌典=4日、タイ(日本ウエイトリフティング協会提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 古川 峻

 重量挙げのワールドカップ(W杯)は4日、タイのプーケットで行われ、男子73キロ級の宮本昌典(沖縄工高―東京国際大出、同大職)はスナッチ158キロ、ジャーク192キロ、トータル350キロでいずれも日本記録を更新し4位となった。国際重量挙げ連盟(IWF)が定める出場基準である五輪資格ランキング10位以内の3位に付き、代表入りを確実にした。近内三孝(ビックワンアスリート)はスナッチで全て失敗し記録なしだった。


 スナッチ3本目で宮本昌典が日本新の158キロに挑戦した。2本目の155キロはバーベルを乗せた位置が悪く、失敗していた。W杯の目標はトータル350キロで五輪資格ランキング3位に付くことだ。「できる自信があった。丁寧にやればいい」。恩師で女子代表の平良真理監督に頬と肩をたたかれ、舞台に上がった。

 いつものように深呼吸しておたけびを上げ、シャフトを握る手に力を込めた。爆発力で一気に引き上げたバーベルを頭上で静止させた瞬間、成功を確信したかのように全身から自信がにじみ出た。W杯に向け強化した脚部を伸ばしきる。ブザーが響くとともにシャフトを手から離し、「しゃあー!」と叫んでガッツポーズを決めた。

 その勢いのままジャーク1本目で187キロを成功させ、2本目で日本記録の192キロを差し上げた。今度は無言で右拳を力強く握りしめた。「通過点という感じ。日本記録を狙っていたのではなく、シンプルに自分自身の記録として350キロを出そうとしていた」。目標達成も淡々としていた。

 大会前の練習でジャーク196キロを持ち上げるなど力は付いていたが、けが防止と五輪にピークを合わせるため、ジャークの3本目は棄権した。他国の選手が五輪出場を懸けて抜き差しならない死闘を繰り広げる中、「余力を残して終えたことは他国の選手より一歩リードできた」。

 東京五輪金メダリストの石智勇(中国)がけがから復帰し、上位争いは熾烈(しれつ)を極める。五輪ランク3位は表彰台を狙える位置。「ようやく切符という形で条件が整った。後はオリンピックでメダルを取るだけ。今の自分を表現できるようにしていく」。視線は常に、集大成のパリを向いている。

(古川峻)