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創部3年のエナジック、あと一歩届かず 鮮烈な記憶残した「ノーサイン野球」<夏の甲子園沖縄大会決勝>


創部3年のエナジック、あと一歩届かず 鮮烈な記憶残した「ノーサイン野球」<夏の甲子園沖縄大会決勝> 興南に惜しくも敗れ、悔しがるエナジックナイン=21日、沖縄セルラースタジアム那覇(又吉康秀撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 大城 三太

 沖縄セルラースタジアム那覇で21日に行われた第106回全国高校野球選手権沖縄大会決勝は、興南が延長十回タイブレークの末に4―3でエナジックにサヨナラ勝ちを決め、2年ぶり15度目の優勝をつかみ取った。興南の夏の甲子園出場は14度目。興南は二回、島田潤正の適時打で1点を先制、続く三回にも2点を追加し3―0とした。七回にエナジックは與那覇颯真の中安打やイーマン琉海の盗塁などで好機をつくり、3点を返して同点に追いついた。同点のまま九回を終え、迎えた十回延長タイブレークの2死二、三塁。興南は代打の嘉数大毅が左中間へと適時打を放ち、3時間を超える熱戦に終止符を打った。


 エナジックの夏が終わった。スタンドを埋め尽くした大観衆を前に、県内野球史に残る名勝負を繰り広げたが、あと一歩届かなかった。試合後も泣き崩れる選手や、ロッカールームで同じく目を腫らしたコーチ陣からねぎらいを受ける選手の姿があった。

 神谷嘉宗監督は「ここまでよく頑張ってくれた。人生は長い。ここで学んできたことを生かして、人生の勝利者になってほしい」と表情に曇りはなかった。

 2022年に開校、創部し、現3年生が1期生。部員は15人からスタートした。他校とは異なる、自主性や選手自身に判断を任せる「ノーサイン」のスタイル。熟成を待つかのように3年間を積み上げてきた。

 捕手の龍山暖(はるき)は入学時を振り返り、「興南や沖縄尚学といった横綱に勝つには、王道の野球では勝てないと思っていた。相手の嫌なプレー、投手の心理を読んで自ら実行する野球は間違っていなかった」と実感を込める。

 新里哲弥主将は「(ノーサインは)1年の頃は全くうまくいかなかったが、ようやくかみ合うようになった。最後までスタイルを貫けた。自信を持って、これからの野球人生を歩みたい」と敗者の表情はなかった。

 (大城三太)