変形性関節症などの再生医療に取り組んでいる琉球大学は、プロのスポーツ選手を対象とする「スポーツ再生医療」に着手したことを9日、発表した。第1号として、マスターズ陸上400メートルリレーで世界新記録を出した譜久里武選手(53)の脂肪吸引手術をし、採取した脂肪幹細胞の培養を始めた。
琉大大学院の清水雄介教授によると、関節の軟骨がすり減り、変形や痛みが生じる変形性関節症の患者は国内で2500万人と推定される。
昨年5月、患者本人の脂肪幹細胞を用いた変形性関節症の治療を九州厚生局に届け出た。脂肪幹細胞は、採取が容易で、炎症を抑える作用がある。培養して移植する治療をこれまで3人に施し、膝や肩の痛みが改善したという。効果には個人差があるが、スポーツ選手にとっては人工関節を入れる手術に比べて短期間でプレーを再開できるなどの利点がある。譜久里選手が左膝に痛みを抱えていることを知った大学側が再生医療を勧めた。
譜久里選手は3月から痛みがあるといい、「優勝も体をだましだまししながらできた。良質なトレーニングをして選手生命を伸ばすためにもしっかり治したい」と話す。
マスターズ陸上を終えた9月、脂肪20ccを吸引する約20分間の手術をした。幹細胞を抽出して培養し、11月には患部に注射で投与する。日常生活に支障はなく、2週間で体を動かせるという。琉大病院では大屋祐輔院長のもと、清水教授や東千夏講師らが来年夏をめどに「スポーツ再生医療」として県内外の選手の受け入れを目指す。自由診療になるため治療費が高額になるが、清水教授は、キャンプで訪れる野球やサッカー選手らへの施術など沖縄での再生医療の可能性を指摘する。譜久里選手も「全てのアスリートにとって役立つ治療が、沖縄でできるようになるのはうれしい」と期待している。
(宮沢之祐)