今夏のパリ五輪で日本のメダル獲得を支えた県出身者がいる。セーリング混合470級で銀メダルを獲得した岡田奎樹・吉岡美帆ペア専属トレーナーの玉城千鶴さん(45)=読谷村=だ。県出身トレーナーとしては、石嶺忍さん=浦添市=(45)も女子49erFX級の田中美紗樹・永松瀬羅ペアを支えた。初めて五輪の日本代表団に加わった2人は「次の五輪につながる大会になった」と充実した表情で語った。
2人は県内の整体専門学校で日本スポーツプロジェクト協会(与那原町)の屋比久隆生代表理事から指導を受け、トレーナーの道を歩み始めた。セーリングに導いたのも屋比久代表だ。2017年、座間味村で開催されたセーリング日本代表合宿のサポートに、屋比久代表の声掛けで石嶺さんと玉城さんも関わった。石嶺さんは合宿後にワールドカップの代表トレーナーとしてフランスにも赴いた。共に21年の東京五輪後に代表トレーナーに就いた。
南仏のマルセイユで開催されたパリ五輪のセーリング。世界選手権(2023年、オランダ)優勝者の岡田・吉岡ペアを支えた玉城さんは「普段通りを心掛けたが、メダルのプレッシャーは相当あった」と明かす。10レースの合計ポイントで競う本番は、サポートボートに乗り、選手の動きや表情を確認。マッサージなど必要なケアを施した。
ペアは首位スタートしたが、レース中盤で崩れて順位を落とした。この時も玉城さんは選手や監督と緊密に意思疎通を図り、チームで卓球をするなど緊張をほぐした。「家族よりも長い時間を過ごしてきた」
岡田・吉岡ペアは最後まで食い下がり銀メダルを獲得。玉城さんは「プレッシャーがかかる状況でも実力を出し切って結果を出した。大感動、大感激だった」と感無量だった。
石嶺さんは同階級の五輪出場者で最も体格が小さい田中・永松ペアのトレーナーだ。「重たいほど推進力が増す」と日頃から選手のウエートトレーニングを徹底してきた。レースは4位で初日を終え、最終的に17位でフィニッシュ。国内の競技者が少ないカテゴリーだが、石嶺さんは「世界との差が縮まっている」と手応えをつかんだ。
2人はさまざまな競技でトレーナーを務めながら、今後もセーリング代表を支える。日本スポーツプロジェクト協会のスポーツトレーニングアドバイザーとして県内の学校などで指導も行う。石嶺さんは「また五輪の舞台に戻ってきたい」、玉城さんは「銅メダルを獲得した関一人監督と日本の20年ぶりのメダル獲得に携われて感慨深い。この経験を今後の活動に生かしていきたい」とさらなる飛躍を誓った。
(古川峻)