米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に関して、大浦湾側の軟弱地盤改良工事の設計変更申請を承認するよう斉藤鉄夫国土交通相が県に求めた指示について、玉城デニー知事は指示期限の4日、国交相に「期限までに承認を行うことは困難」と回答し、事実上の不承認とした。国は県の対応を受け、5日にも代執行訴訟の手続きに入る見込み。辺野古新基地建設問題は新たな局面に入る。
玉城知事は期限内での承認が困難な理由として「最高裁判決の内容を精査した上で対応を検討する必要があること、県民や行政法学者などからさまざまな意見が寄せられ、県政の安定的な運営を図る上で意見の分析を行う必要があること」を挙げた。9月27日の勧告に対する回答と同じ内容となった。
記者会見で玉城知事は、仮に承認しても辺野古の新基地が利用開始されるまでに12年かかることに触れ「普天間の騒音激化や危険性除去がそれほどの年月を要するのは看過できない。知事として承服できない」と指摘。一方で「行政の長としては最高裁判決を受け止める必要がある」とも話し、協議を重ねた結果として判断に至らなかったと説明した。代執行訴訟の対応については回答を控えた。「政府としっかり対話する環境をつくってほしい」と求めた。
県が期限内に承認しなかったことにより、今後、代執行訴訟に進む見込みだが、県の敗訴は濃厚と考えられる。県が敗訴すれば、裁判所は知事に承認を命じ、応じない場合は国が承認を代執行することで、大浦湾側での埋め立てを着工できる。県は上告可能だが、最高裁で勝訴しない限り工事は止まらない。
玉城知事は2021年11月、沖縄防衛局の設計変更申請について、軟弱地盤の調査などが不十分なことを理由として、不承認とした。この処分を巡る訴訟で、最高裁は9月4日、県の訴えを退け、県の敗訴が確定した。
国交相による指示を巡っては、県庁内の職員を中心に「行政として最高裁判決に従うべきだ」とする意見と、与党県議などを中心に「2019年の県民投票に代表される埋め立て反対の民意を尊重する必要がある」と承認しないよう求める意見があり、玉城知事は県議会の質問や報道各社の問い掛けに一貫して「対応を検討している」と答えてきた。(沖田有吾)