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【識者談話】知事との対話、政府の責務 辺野古代執行訴訟 江上能義(琉球大名誉教授)


【識者談話】知事との対話、政府の責務 辺野古代執行訴訟 江上能義(琉球大名誉教授) 江上能義氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍普天間飛行場移設に伴う沖縄県名護市辺野古での新基地建設に関し、政府は5日、沖縄県の代わりに大浦湾側の軟弱地盤改良工事の設計変更申請を承認できるようにする代執行訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。識者の見解を聞いた。


 これまで日米両政府が沖縄に積み重ねてきた差別と犠牲強要の歴史に冷酷な国の代執行という重大な強制が新たに刻まれた。国が大義名分とする「公益を著しく損なう」の公益は国益であって、辺野古新基地建設で著しく損なわれる沖縄の公益は顧みられない。

 最高裁は県の上告を棄却し、門前払いをした。県側の言い分を無視して国に追随しただけだった。そして今度は、日米安保条約を最優先した問答無用の強権発動である。本来、日本政府は米軍基地を過重に負担し続けている県民の声をアメリカ側に届けて協議するのが責務であるはずなのに、アメリカの意向に追随して沖縄に一方的に負担を押しつける。これは民主主義国家としては異常な構図である。

 日米安保の要である沖縄にこうした仕打ちを続ける限り、日米安保体制はいずれ根幹から揺らぐことになろう。また日本が民主主義国家であるというのなら、沖縄との対話を拒否する日本政治は機能不全に陥っているとしかいいようがない。議会制民主主義は対話と討論を大前提に成り立ってるからである。

 この国の民主主義の行方を危惧するのは筆者だけではないだろう。新基地反対の民意と最高裁判決の板ばさみとなって苦渋の決断をした玉城デニー知事はいまも政府との対話を求めている。見解の相違はあっても知事が求める対話に応じるのが日本政府の責務である。

 (政治学)