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辺野古代執行訴訟・県側答弁書のポイント(1)新基地「県民の同意得るべき」 


辺野古代執行訴訟・県側答弁書のポイント(1)新基地「県民の同意得るべき」  多くの作業船が見える大浦湾。奥は埋め立て工事が進む米軍キャンプ・シュワブ沿岸=2023年9月26日、名護市瀬嵩(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 梅田 正覚

 沖縄県は、国が代執行訴訟を提起する際の要件の一つとして主張する「著しく公益を害することが明らか」という点について、新基地建設に反対する玉城デニー知事を当選させた県民の「民意」を用いて反論した。


 県は「公益」とは法令を所管する大臣の公益のみならず、地域住民の民意(自己決定)が考慮されると指摘した。住民自治、団体自治の観点から地域住民の自己決定を踏みにじることはあってはならないとした。
 県民は沖縄戦や日本復帰前後の基地被害の記憶から、普天間飛行場の危険性の除去を何よりも望み、新基地建設に反対し続けていると説明。その上で「県民の明確な民意は、それ自体が公益として考慮されるべきであって、新基地建設は県民の真摯(しんし)な同意を得るべきであって、同意を得ない状況で代執行は認められるべきではない」と主張した。


 国は、安全保障と普天間飛行場の固定化の回避という公益上の重大な課題が達成されず、日米同盟にも悪影響を及ぼすことを公益侵害に当たると主張した。
 一方、県はこれらの国主張は「抽象的」だと喝破した。新基地建設を巡り、翁長雄志前知事が国と争った不作為違法確認訴訟の2016年の判決では、北朝鮮の弾道ミサイルの射程距離に沖縄が含まれないことから「沖縄には地理的優位性」があると判示していた。しかし、現在は中国のミサイル攻撃能力の向上により、米海兵隊は遠征前進基地作戦(EABO)に基づき海兵沿岸連隊(MLR)を組織し、小規模な部隊が固定された基地からではなく、離島を転々として戦闘を行う方針を示していると説明。「安全保障上の合理性や必要性が仮にあるとしても、それは大きく変容しつつある」と指摘した。
 新基地建設計画が進まないことが「著しく公益を害することが明らか」とは言えないため要件は充足していないと主張した。

 (梅田正覚)