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【識者談話】具体的反論に説得力 辺野古代執行訴訟に県が答弁書 徳田博人氏(琉球大学教授)


【識者談話】具体的反論に説得力 辺野古代執行訴訟に県が答弁書 徳田博人氏(琉球大学教授) 徳田博人氏(琉球大学教授)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設計画を巡り、国から代執行訴訟を提起された県は、福岡高裁那覇支部に答弁書を提出して国と全面的に争う姿勢を示した。答弁書では新基地建設に反対する玉城デニー知事を当選させた県民の「民意」を前面に押し出し、複数の理由を挙げながら、国の請求を棄却するよう求めている。


 県の答弁書は、国の訴状に対して具体的な反論を展開し説得力がある。短い期間でよくまとめたという印象だ。国は、訴状で代執行訴訟の要件の該当性を個別具体的に吟味して主張する作業を欠いている。県はその主張立証がされていないなどとして反論している。

 県は2016年の国地方係争処理委員会が「両者が担う公益の最大化を目指して互いに十分協議し調整すべきだ」という決定などを踏まえ、これまで何度も国に対話を求めてきたことを書いている。歴史を踏まえた住民意思について述べていることもとても重要な点だ。

 辺野古新基地建設は当初の計画から紆余曲折を経て、県民にとって負担の大きい公益に反する施設へと変遷している。計画の進捗(しんちょく)に障害となるものは全て「著しく公益を害することが明らか」とはいえず、その実態を個別具体的に審査しなければならない。

 国は県の具体的な指摘に対して答えないといけないが、訴状では答えられる内容にはなっていない。国が県の答弁書を受けてどう反論するのかどうか、今後の動向が注目される。

 裁判所はこれまでの地方分権改革などの蓄積を踏まえて審理し、司法としての矜恃(きょうじ)を示してほしい。


 (行政法)