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汚水処理、沖縄で半世紀 畜産の進展と共に地歩築く 共和化工代表取締役社長・吉村俊治さん <県人ネットワーク>


汚水処理、沖縄で半世紀 畜産の進展と共に地歩築く 共和化工代表取締役社長・吉村俊治さん <県人ネットワーク> 吉村 俊治さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「私たちの堆肥でできた野菜を沖縄の皆さんにも味わってほしい」

 情熱的な語り口で思い描くプランを語る。

 汚泥などの有機廃棄物を分解して堆肥にするプラントの製造や汚水処理事業を展開する共和化工(本社・東京・五反田)。2019年に創業60年の節目を迎えた同社のトップを務める。16年、生ゴミや下水汚泥を堆肥にし、その堆肥で農作物を生産する循環型農業で生産した野菜や米を提供する小料理店「和響」を東京・五反田のビル街にオープンさせた。しゃぶしゃぶのほか、刺身や焼き魚なども楽しめる店は、平日のランチ時になると近隣のサラリーマンたちでにぎわう。

 「うちの土で育てた米で日本酒も造っているんです。銘柄は『吉村』。私の名前から取りました」と笑う。

 沖縄の日本復帰直前の1970年に福岡県で、食肉処理場の汚水処理業者として創業した同社に入った。沖縄とのつながりはその直後からで、もう半世紀以上になる。

 「初めて沖縄を訪れたのは復帰前。現地法人の設立のためです。那覇市壺川の雑貨店の2階、10坪もない場所からスタートしました」

 大里村や名護市、沖縄市など本島各地の食肉センターの設立に携わり、沖縄での地歩を築いた。ただ、復帰直後の沖縄でのビジネスには苦労もあったという。

 「どこにいっても歓迎されるという状況ではなかった。県民の方々にも複雑な思いがあったんだろうと思う。でも、酒を酌み交わして語り合えば分かり合える。コツコツと関係を築いていきました」

 沖縄の畜産業の進展と歩調を合わせるのと共に、下水処理のプラントメーカーとして会社を成長軌道に乗せた。

 2002年からは、汚泥などの有機廃棄物を分解して堆肥にする超高温好気性菌の「YM菌」を活用した堆肥化事業に参入。菌の発見者で名前の由来でもある、鹿児島県で環境事業を展開する企業「山有」と業務提携することで事業拡大の道筋を付けた。

 分解時に約100度まで高温になるYM菌の特性を活用し、より上質で安全な堆肥の製造を可能にした密閉型撹拌(かくはん)装置「YMひまわりくん」を開発。同装置含め堆肥化プラントを全国62カ所で展開し、県内では宮古島市や金武町で稼働中だ。

 「下水汚泥の処理から堆肥化、さらには循環型農業事業の展望も開けてきた。沖縄でも資源循環型農業を浸透させていきたい」と力を込めた。

 (安里洋輔)

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 よしむら・としはる 1947年生まれ、福岡県糸島市出身。70年12月に共和化工に入社。72年から77年まで関連会社設立のために沖縄で過ごした。2004年、同社の3代目の代表取締役社長に就任した。