prime

どんな名前で呼ばれたい? <伊是名夏子100センチの視界から>160


どんな名前で呼ばれたい? <伊是名夏子100センチの視界から>160
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社


 仲のいい人から名字の「伊是名さん」で呼ばれることに、違和感がありました。なぜなら沖縄では、先生と生徒の間でも、友だち同士でも、名前で呼び合うことがよくあり、それだからこそ仲よくできると感じていたからです。しかし沖縄県外で生活する中で、仕事で知り合った人と、プライベートでも仲良くなることが多く、「伊是名さん」と呼ばれたままで親しくなることも増えてきました。最初は堅苦しく感じて戸惑いましたが、今では姓で呼ばれると、対等な関係性だと安心でき、尊重されていると思い、好きになってきました。

 私は伊是名の姓のままでいたかったので、結婚後も事実婚をしています。しかし出産前後は婚姻をし、パートナーの名字になっていました。その間は自分ではない人のよろいを背負わされているようでした。特に体調が悪い時に、病院でパートナーの姓で呼ばれると、自分が呼ばれていることになかなか気づけませんでした。ペーパー離婚後の初めての往診で、自分の名前が呼ばれた時には、言葉にならないほどうれしく、自分を取り戻せたようでした。同時に他の名前で呼ばれていたことが、どんなにつらかったのかと改めて気づいたのです。呼ばれたい名前で呼ばれることは、本当に大切ですね。

 もちろんパートナーと姓を一緒にしたい人はいいと思いますが、私はそうではなかったのです。今の日本の制度がそれに対応していないことが悲しいです。自分がどんな名前で呼ばれたいかを考えることは、自分を見つめ、自分を大切にする一歩になります。そして自分が呼ばれたい名前で生きることで、自分が安心できるいい人間関係が作れると思っています。

 また英語では一般的に男性のことをHe、女性のことをSheと使いますが、体と心の性が一致しなかったり、自分の性別を決めていない、もしくは決められない人にとって、男女二元論のHe/Sheの表現は苦しくなります。自己紹介の時に、どんな言葉を使ってほしいかをまわりに伝え、性別に捉われないTheyを使う人も増えています。

 自分が安心できる方法をまわりに伝えることは、勇気がいることもありますが、自分らしく生きることにつながるでしょう。自分の呼ばれたい名前を、あなたも考えてみませんか? まわりの人には、「あなたはどんな名前で呼んでほしい?」と聞いてみませんか? 好きな名前で呼ばれることで、安心でき、新しいことにも挑戦できる力が湧いてくるかもしれません。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。