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「改良不要」なぜ主張 仲井真元知事承認の前提に疑義 軟弱地盤を07年に把握、防衛局揺らぐ信頼


「改良不要」なぜ主張 仲井真元知事承認の前提に疑義 軟弱地盤を07年に把握、防衛局揺らぐ信頼 名護市辺野古の沿岸部。奥の大浦湾側には軟弱地盤が見つかっている=5月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 名護市辺野古の米軍基地建設予定区域に軟弱な地層が存在し、詳しい調査が必要だと沖縄防衛局が事前の報告書に明記していた。地盤改良は必要ないと主張した埋め立て申請書の信頼性が揺らぐ記述で、専門家からは防衛局が当時、地盤強度をどう認識していたのか説明すべきだとの声が上がる。

 不自然な申請内容

 「報告書には改良が必要な軟弱地盤が存在する可能性が示されている。情報が埋め立て申請に生かされなかった」。こう語るのは日本大の鎌尾彰司准教授(地盤工学)だ。

 鎌尾准教授は、報告書の内容を踏まえ本来、2013年の埋め立て申請の段階で、地盤改良工事を含む設計内容にすべきだったと指摘する。

 防衛局がそうしなかった背景について「早く申請書を出さないと工事が遅れるなどの理由で、切羽詰まったところがあったのではないか」と推測。大規模な地盤改良による工事費の増大が明らかになるのを避ける狙いもうかがえるとする。

 軟弱地盤で工期・工費が増大

 政府は、軟弱地盤のために工期を当初想定の5年から約9年3カ月に延長、総工費は約2・7倍の約9300億円に増額している。

 沖縄県の玉城デニー県政は、防衛局が軟弱地盤の可能性を早期に把握していたのではないかと疑念を示してきた。

 埋め立て申請で、改良が必要な軟弱地盤は確認されていないとした防衛局の主張に対し、県は「合理的根拠が示されていない」と指摘。仲井真弘多元知事による承認後、軟弱地盤が後に明らかになる区域では埋め立て作業がすぐに着手されず「極めて不自然」と訴えてきた。軟弱地盤の可能性を把握していなければ説明が付かないとみている。

 元土木技術者で沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんは、報告書は県の見方を裏付けるとした上で「申請時に報告書の内容が分かっていれば、県が承認することは難しかったのではないか」と話す。県側も、当時の内容が妥当だったのかどうか、確認する必要があるとの考えを示す。

 情報小出し「おかしい」

 琉球大の徳田博人教授(行政学)は、申請前に地盤の追加調査をしなかった防衛局の対応が「国土交通省の省令などに違反している可能性がある」と指摘する。省令やそれに基づく告示は、施設の設計の際、地盤を含む自然条件を適切に考慮して安定が損なわれないようにすることを求めているためだ。

 徳田教授は「情報を小出しにして承認を得るのはおかしい。埋め立て申請前に軟弱地盤についてどのように認識していたのか防衛局は説明する必要がある」と強調した。(共同通信)

2007年 防衛省沖縄防衛局が地層報告書。「軟弱な沖積層が広く、厚く分布」と明記。追加調査の必要性も指摘
2013年防衛局が埋め立て申請。追加調査はせず、地盤に大きな問題なしと説明。その後、県が埋め立て承認
2014年防衛局が追加調査開始
2018年防衛局が土砂投入開始
2019年 政府が軟弱地盤の存在認める
2020年 防衛局が県に設計変更を申請
辺野古軟弱地盤巡る動き