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イスラエルのガザ攻撃 被抑圧者に正義を <乗松聡子の眼>


イスラエルのガザ攻撃 被抑圧者に正義を <乗松聡子の眼>  乗松 聡子さん
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 今、起こっているイスラエルによるガザの無差別攻撃は「10月7日に始まったわけではない」。著書「パレスチナ/イスラエル論」(有志舎、2020年)などで知られる東京経済大学の早尾貴紀教授は11月7日、明治学院大学で開催された緊急シンポジウムで強調した。今、ガザ地区で起きていることは「パレスチナの民族浄化」100年の一段階であると、歴史をひもといた。

 ユダヤ人は欧州全体で差別され、第2次大戦では「ホロコースト」という残虐な民族浄化を被った。そのユダヤ人の国家を作るとして、先住のパレスチナ人を排除することによってイスラエル建国(1948年)を可能にした。ヨーロッパのレイシズムのしわ寄せを中東に負わせる結果となったのである。これはユダヤ教対イスラム教の対立ということではなく、「欧州列強の人種主義と中東全体への植民地主義(イスラエルはその要塞(ようさい))」であるという本質を、早尾氏の報告は浮き彫りにした。

 日本も他人ごとではない。「ホロコースト」を行ったナチス・ドイツと大日本帝国は同盟関係にあった。第1次大戦後、戦勝国の英国がパレスチナを「委任統治領」としたとき(1923年)、日本はこれを承認し、敗戦国のドイツ領土だった南洋諸島を委任統治領とした。

 その南洋諸島には、日本の植民地的土地政策の下、貧困に苦しむ沖縄人が国策移民の一環として大量に送り込まれ、その後日本が起こした戦争に巻き込まれ、多くの悲劇があった。

 このように、今起こっていることは朝鮮、琉球、アイヌモシリ、台湾、満州などを植民地支配した日本と重なる側面がある。「偽満州国」には「満蒙開拓団」として約27万人の入植者を送り、先住の人々の土地を奪った。

 敗戦時は関東軍に見捨てられ、ソ連兵や「暴民」の襲撃を受けながら逃避行し、8万人が亡くなった。日本では、このように被害者視点で語られることが多いが、一人一人に起こった悲劇とは別に、構造的暴力に加担したことを認識する必要がある。

 日本の植民地支配下の朝鮮では、独立運動や義兵闘争を弾圧した虐殺の歴史がある。帝国は、正義のために抵抗する人たちを「暴徒」とみなし「100倍返し」かのごとく、圧倒的な力の差で報復攻撃した。

 関東大震災後、当局がデマを流し、軍、警察、自警団が約6700人の朝鮮人を虐殺したのはこの流れで起きたことだ。今年で100年たつが、日本政府はこの歴史に向き合うことを拒んでいる。

 11月5日、東京で開催された「21世紀自主フォーラム」主催の集会「パレスチナ人民に連帯する集い」で、パレスチナ人留学生のJさんは「“平和”のために正義を犠牲にすることはできない。どちらかを選ばなければいけないのなら正義を選ぶしかない」と言った。正義なしの「平和」など、誰かを踏みつけた上での支配者側の「平和」でしかない、という意味と理解した。

 パレスチナ民族浄化を可能にしてきた米国をはじめ西側諸国の市民は、今起こっている虐殺をやめさせる責任がある。デモに参加し、政治家に直接訴えよう。

 (「アジア太平洋ジャーナル・ジャパンフォーカス」エディター)