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国立公園、歩道の5割に「管理者なし」 “やんばる”全路線で不在 全国規模で災害対応に課題 環境省


国立公園、歩道の5割に「管理者なし」 “やんばる”全路線で不在 全国規模で災害対応に課題 環境省 国立公園内の歩道の管理者設置状況
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 全国に34ある国立公園内の登山や散策に利用される歩道全1127路線のうち、整備や保全を担う管理者が設置されていない路線が50%の561に上ることが26日、環境省の調査で分かった。国立公園であるにもかかわらず、管理者不在で荒廃が進む登山道が各地にあることや、災害時に迅速な対応ができないなどの課題が浮き彫りとなった。

 全国規模の詳細な実態把握が行われたのは初。共同通信が情報公開請求し入手した内部報告書で明らかになった。公園ごとの格差も判明。尾瀬国立公園(栃木など)は21の路線のうち約6割で全区間に管理者がいたが、やんばる国立公園は7路線全てで不在だった。

 国立公園の登山道を巡ってはボランティア頼みの維持の常態化や、行政が現地の詳細な状況を把握しておらず適切な危険表示ができないといった問題が指摘されてきた。

 国立公園の管理は国が自然公園法に基づき、自治体や民間と連携して行う。公園内の歩道の保全や修復を担う「事業執行者」と呼ばれる管理者には自治体や環境省がなる場合が多いが、民間事業者が指定されたり、人が繰り返し歩くうちに自然にできた道で不在となったりするケースもある。

与那覇岳の登山道=2017年9月、国頭村

 環境省は昨夏に実態把握に乗り出し、各公園の管理方針を定めた「公園計画」に明記された全ての登山道や遊歩道計1127路線を調査。今年3月に報告書をまとめた。

 報告書によると、路線内の全区間で管理者が不在なのは561路線。沖縄県内の3公園(やんばる、慶良間諸島、西表石垣)18路線のうち、全区間で管理者不在は12路線。一部区間で管理者不在の路線は261、管理実態が不明な路線も40あった。荒廃が進み既に利用が困難になっている道や、公園計画に記載されているが存在しない道も含み、詳しい内訳は不明だ。全区間で管理者がいたのは24%の265路線にとどまった。

 報告書は管理者設定が進まない理由として、自治体などが事故時の管理責任を負うことを懸念する現状や、予算不足を指摘。問題点として管理不足での荒廃を挙げるほか、災害時に通行止めなどの緊急対応が必要になった際、役割分担が不明確なため迅速な対応ができない恐れもあるとした。