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法律変わる時こそ考えよう<伊是名夏子100センチの視界から>163


法律変わる時こそ考えよう<伊是名夏子100センチの視界から>163
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 明日12月13日から旅館業法が改正され、いわゆる迷惑客の宿泊を事業者は断ることができます。どのようなことが迷惑になるのか、と考えた時、私は不安になります。なぜなら2年前、私が行きたい駅がバリアフリーではないために、電車に乗せてもらえなかった体験をネットで発信したら、迷惑行為だと言われ続けたからです。

 耳の聞こえない人がホテルに宿泊する時、手話や筆談での説明を求めたら、迷惑になるでしょうか? 目の見えない人が、盲導犬を連れて宿泊したい時はどうでしょう? 車椅子ユーザーが、階段しかない旅館で手伝いをお願いしたら、宿泊を断られるのでしょうか? 厚生労働省の旅館業法のサイトには、障害のある人がバリアの除去を申し出た時、例えば筆談や移動のサポートを求めることは、迷惑行為にはならないと書かれています。

 沖縄は宿泊施設が多く、障害のある人の観光に力も入れているので、宿泊を拒否することはないとは思います。しかし法律が変わると、いろいろな面に影響が出ることもあるので、改めて障害のある人への対応について考えていけたらと思います。

 北米に比べて、日本の障害者への対応は遅れていると感じることがあります。ハワイ旅行に行ったときのことです。ホテルとショッピングモールをつなぐシャトルバスがバリアフリーではなかったので、車椅子の私は利用できませんでした。事前にメールで交渉すると、車椅子が乗れるタクシーを、私の予定に合わせて無料で提供してくれました。

 またカナダで観光バスを利用しようとしたら、車椅子が乗れるバスを手配してもらうために、予約を1日変更せざるを得ませんでした。しかし当日は花束とともに謝罪されました。日本では車いすが利用できる観光バスはほとんどないので、まさか1日の延期で謝ってもらえるとは驚きました。

 提供するサービスを利用できないお客さんがいたら、まずは話し合いが大切です。予算や人手の関係でできないこともあるので、完璧を目指すのではなく、その状況に応じて、できることを考えていきませんか? 障害のある人にとっても、話し合いをもつことは緊張したり、不安になったり、めんどくさく感じることもあるでしょう。しかし必要なサポートは一人ひとり異なるので、自分の状況を伝えていきましょう。事業者も、利用者も、お互いに話し合いを重ね、誰もが楽しめる、いい旅を作っていきたいですね。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。