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一筋縄ではいかない ヘルパー育成 <伊是名夏子100センチの視界から>164


一筋縄ではいかない ヘルパー育成 <伊是名夏子100センチの視界から>164
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 人は一人ひとり得意不得意があり、一緒に長時間過ごすと、それが顕著に分かります。たとえばヘルパーさんに買い物をお願いした時のことです。買い物慣れをしていて勘が働く人だと、新しいスーパーでもすぐに商品を見つけることができます。しかし行き慣れていないスーパーだと、見つけるのに時間がかかるヘルパーさんもいます。

 掃除機をかける時も、カーテンをめくって下までかける人もいれば、カーテンの下はかけない人もいます。掃除機をかけ始める前に、まわりの家具にカーテンがかからないよう、カーテンをしばってからかけ始める人もいます。人によってやり方も、かかる時間も違います。私がどこまでを求め、どういうやり方だったら、そのヘルパーさんと私がやりやすいかを考えます。私が譲れないところは繰り返し伝えます。特に私は床をはうため、キッチンの汚れよりも、床の汚れが気になるので、床を丁寧に拭いてもらいつつも、自分が見えないキッチンの汚れも細かく伝えてもらうようにします。

 障害者の生活を支えるヘルパーという仕事は、人と人とがつながれる素晴らしい仕事です。しかし長時間一緒に過ごすことで、私の嫌な面を見たり、関係が深くなればなるほどお互いに言いにくいことも出てきたりします。一筋縄ではいかない、生身の人間同士の葛藤があり、それが魅力です。試行錯誤しながら話し合い、時間を積み上げていくことで信頼関係が深まっていきます。

 またわが家では、ヘルパーさんに子育てにも関わってもらうので、絵やピアノが上手だったり、マンガが好きな人だったりすると、子どもとの時間が過ごしやすくなることもあります。10人のヘルパーさん、それぞれの良さを生かし組み合わせていくことも私の生活ならではです。

 賃金が低く、ヘルパー不足が激しい中、ヘルパーさんを見つけるのはなかなか難しいこともありますが、一人ひとりの出会いを大切にして、私の生活を築いていきたいです。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。