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人口約31万人超の那覇市も 「土地利用規制法」の対象区域 大規模指定で生活への影響も懸念


人口約31万人超の那覇市も 「土地利用規制法」の対象区域 大規模指定で生活への影響も懸念 那覇空港
この記事を書いた人 Avatar photo 安里 洋輔

 政府は、安全保障上重要な施設や国境離島の周辺の土地取引を規制する「土地利用規制法」の対象区域に県内の米軍基地や自衛隊施設など31区域の44施設を挙げた。嘉手納基地など17施設が対象となった米軍関連施設の周辺自治体など、県内の広い範囲が規制の対象となる。県民生活への影響も懸念される大規模な区域指定に、県や県内自治体からは戸惑いと不安の声が上がった。

 県の担当課は「既に広大な米軍基地が県土の有効利用を阻害していることに加え、注視区域などに指定されることによって、社会経済活動の支障や県民の基本的人権の侵害が生じることは決してあってはならない」とした。

 嘉手納基地や嘉手納弾薬庫地区、普天間飛行場、キャンプ瑞慶覧が特別注視区域の指定候補となった中部地区。9市町村で8施設をまとめて指定候補としており、大きな影響が予想される。北谷町の渡久地政志町長は「どのような不利益があるのか分からない。国は責任を持って説明するべきだ」と述べた。

 今回の区域指定では、那覇市の陸上自衛隊那覇駐屯地や米軍那覇港湾施設(那覇軍港)、航空自衛隊那覇基地などが候補になり、自衛隊機が利用する那覇空港も対象に含まれた。

 政府は昨年9月に閣議決定した区域指定の基本方針で、「安全保障の確保と自由な経済活動の両立」のため、「留意事項」として「区域面積の大部分」が人口集中地区で、人口約20万人の市町村が含まれる場合には、特別注視区域に「指定しないことがある」としてきた。那覇市の人口は、政府が規定する水準を超える約31万人超だ。

 内閣府幹部は、「留意事項」で「大部分が人口集中地区」としている部分の「大部分」の基準が、「区域全体の8割を超えている場合」と規定していると説明。那覇市が特別注視区域から外されなかった背景として、人口集中地区の割合が「7割」だった点を理由に挙げた。

 この点について、那覇市の担当者は、本紙取材に「詳細は分からない」とだけ回答。県は、今回の候補地で那覇市を始めとした中南部都市圏の人口が集中する区域や那覇空港周辺、返還予定の米軍基地が含まれていることに触れ「これらの土地を有効に活用することは、本県の振興発展を図る上で極めて重要」だと述べ、指定によって今後の土地利用に影響が生じないようにする必要があると指摘した。

 国境離島として「注視区域」の指定候補となった伊江村の名城政英村長は、「情報がまだこちらに入ってきていないので、コメントのしようがない」と述べるにとどめた。

 (安里洋輔まとめ)