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【深掘り】迫るXデー 沖縄県が「事前協議」に応じるワケ、横たわる「懸念」 辺野古新基地


【深掘り】迫るXデー 沖縄県が「事前協議」に応じるワケ、横たわる「懸念」 辺野古新基地 作業船に土砂を積み込む作業が続く本部町の本部港塩川地区=5日午後
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設で、県は防衛局が求めていた大浦湾側の埋め立ての実施設計などに関する事前協議に応じる方向で調整に入った。代執行訴訟の敗訴で、協議には応じざるを得ない状況だ。一方、県としては持てる権限を活用することで、代執行訴訟の上告などを顧みず、着工に前のめりな国側にくぎを刺したい思惑もある。だが過去には国が協議を打ち切って工事に着手した前例もあり、先行きは不透明だ。 

 事前協議は2013年に行われた埋め立て承認の「留意事項」で、防衛局に対し、実施設計について事前に県と協議するよう定めたことに基づく。
 防衛局は23年9月、大浦湾側の工事を見据えて県に協議書を提出したが、県は10月、代執行訴訟が継続中で、設計変更申請が承認されていないことなどから「協議に応ずることはできない」と回答していた。だが、国交相が代執行を実施し、変更申請は承認された。
 県関係者は「承認されたことを、なかったようには取り扱えない」と話し、最高裁に上告した代執行訴訟とは切り離して考える必要があると説明する。
 別の関係者は「以前に石材が投入された際には周囲が白く濁るなどの問題も生じた。(工事が行われるなら)環境面の影響を小さく抑える必要がある」と協議を行う必要性を語った。
 県は協議が調うまでの間、大浦湾側の工事着手を見送るよう防衛局に求める方針。だが、防衛局側がそれに応じるとは限らないとの見方も強い。
 防衛局は15年、計画している護岸など全22カ所のうち、軟弱地盤のない辺野古側を中心に12カ所のみの実施設計を提出して県に協議を申し入れた。ただ、これを一方的に打ち切って工事を強行した。

 県は当時「全体の実施設計を検討・確認しなければ安全性などを確認することはできない」として護岸全体をまとめて示すよう求めたが、防衛局は応じず「(留意事項の)協議は『合意』までを求めるものではない」と主張し、工事着手を正当化した経緯がある。

 大浦湾側の事前協議でも、認識の食い違いはすでに生じている。協議に応じない姿勢を示した県に対し、防衛省は協議書の提出をもって「県と協議している」との認識を示している。

 今回も県の意向にかかわらず、協議を既成事実化して工事を強行しようとする懸念も横たわる中、工事着手のXデーは近づく。
  (知念征尚、明真南斗、與那原采恵)