<金口木舌>現代版身分制度「非正規」


社会
<金口木舌>現代版身分制度「非正規」
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 福沢諭吉は「学問のすゝめ」で、「天は富貴を人に与えるのではなく、その働きに与える」という格言を紹介している。地位が高く富める人と貧しい人の差は、出自ではなく学問で生まれると説く

▼諭吉さんならこの現象をどう見ただろう。自治体が会計年度任用職員の昇給を、システム上の都合で「できない」と一時放棄した。正規職員には対応したのだから、その差は正規・非正規の「身分」以外にない
▼会計年度任用職員とは誰か。社会のニーズに応じて幾多の職種に分かれるが、外国語が堪能で専門史料を読解したり子どもの発達を学んで保育士として務めたりする人もいる
▼学問に励んだか否か、能力があるかないかではなく、雇う側の都合で給与の差が生まれる。自治体だけではなく民間もしかり。天は人の上に人をつくらず、現代人は正規の下に非正規をつくった
▼ことし7月に紙幣は刷新され、諭吉さんは1万円札を退く。名残惜しさを感じるのは、慣れ親しんだデザインだからというだけではなく、その教えがまだ必要だと思うからだ。