<金口木舌>空のかなたへ飛ぶ鳥は


社会
<金口木舌>空のかなたへ飛ぶ鳥は
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 「不撓(ふとう)不屈」「一意専心」など大相撲の昇進口上で注目されてきた四字熟語。昨今はシンプル路線回帰のようで、大関昇進伝達式で琴ノ若は「感謝の気持ち」と述べた

▼麻生太郎元総理の「おばさん」「美しい方(かた)とは言わない」発言を受け、国会で対応を求められた上川陽子外相は「世の中にはさまざまな意見がある」「一意専心、緒方貞子さんのように努力する」と答えを濁した
▼外交手腕を評価する趣旨だったとする麻生氏は一転「不適切発言」と撤回。元総理の容姿や年齢差別の時代錯誤、それを受け流した外相に「言い返さないのか…」などともやもやする間の急な幕引きだ
▼上川氏が初心の言葉とする「鵬程万里(ほうていばんり)」。鵬(大きな鳥)は高い理想を掲げ、遠くを見て飛ぶ。自戒も込めて言うが、そのとき脇目も振らずに進むだけでいいのか
▼非難されるべきは麻生氏だが、看過する周囲にも責任はある。依然「男性性」優位の社会や経済構造で生きる女性ら弱者の空は険しい。身近な違和感を諦めず、共に声をかけ合いながら飛ぶ空がいい。