<金口木舌>立ち会いの永遠


社会
<金口木舌>立ち会いの永遠
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 新入幕で110年ぶりの優勝を果たした尊富士や、ざんばら髪の大の里といった新世代の活躍に沸いた大相撲春場所。幕内入り3場所目のうるま市出身、美ノ海も奮闘した

▼復帰前の県出身初の幕内力士・琉王から琴椿、若ノ城、琉鵬、美ノ海まで続く沖縄力士の歩みをたどった本紙連載「土俵に懸ける」。組む沖縄角力と押す江戸相撲の独自の融合から半世紀の歴史が育んだ沖縄の相撲が熱い
▼けがや病気、不振や加齢。土俵の攻防は栄光より挫折がつきまとう。そして濃い沖縄の影を背負う。だからこそ立ち合いの一瞬に永遠を見る
▼蹲踞(そんきょ)から両者一斉に身を起こす立ち合いは、審判によらず競技者の呼吸で対戦を始める相撲特有の「バランスの奇跡」。映画「シコふんじゃった」(周防正行監督)が引用する戦前大相撲を観戦した仏の詩人ジャン・コクトーの言葉
▼強い者だけが勝つのではない。そして女性も相撲を取る。琉鵬が伊江島で育てた島袋心海(しんか)(鳥取城北高)は全国の女子の頂点でしのぎを削る。美ノ海以下11人の沖縄関係力士もチバリヨー!