<金口木舌>神々の宿る場所


社会
<金口木舌>神々の宿る場所
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 安里英子さんは沖縄の祭祀や御嶽、自然を題材とした表現活動を続けてきた。山之口貘賞受賞作「神々のエクスタシー」は、森の奥にある御嶽へ至る小道を踏みしめた時の感触を描いた

▼「落ち葉をふみしだく足裏の感触に陶酔した。精神の高揚と肉体の高揚はひとつ」。復帰後の乱開発で沖縄の祭祀(さいし)空間が壊されていく様をつぶさに見てきた。「沖縄崩壊」とも呼ばれた危機的状況への抵抗が、旺盛な表現活動を支えたのではないか
▼高校時代に関わった復帰運動の中で「沖縄とは何か」を問うようになったことが原点。安里さんの目は古い沖縄の精神風景を象徴するような御嶽など島々の聖地に向かった
▼聖地の破壊状況を調べるため琉球孤の島々をくまなく回り、新聞などに寄稿した。77年にはミニコミ誌「地域の目」を発刊。地域の生活史の調査にも取り組んできた
▼沖縄の心のよりどころが消えていくことを憂えた安里さんが逝った。開発で快適な暮らしを得た代わりに私たちは何を失っただろう。安里さんが遺した言葉に答えを探している。