国立劇場おきなわ開場20周年記念公演「組踊・歌劇傑作選」が3月16、17日に浦添市の同劇場であった。16日は組踊「花売の縁」と歌劇「泊阿嘉」、17日は組踊「執心鐘入」と歌劇「薬師堂」が上演された。一つの公演で組踊と歌劇を同時上演するのは同劇場で初。名作の一挙上演に多くの人が来場し、1月から始まった20周年記念公演を“大団円”で締めくくった。16日の公演を取材した。
高宮城親雲上作の組踊「花売の縁」は、眞境名正憲監修。
首里の士族である森川の子(川満香多)は生活苦で大宜味に働きに出る。12年後、首里に残された妻の乙樽(大湾三瑠)と子の鶴松(樋口清美礼)が森川の子を訪ねる。道中、猿引(石川直也)と猿(樋口小百合)や薪木取(眞境名正憲)らに尋ねながら進むと、花売りになった森川の子と再会する。
国指定重要無形文化財「組踊」保持者を中心とした出演者が脇を固め、安定した展開を見せた。猿の踊りでは、かわいらしいしぐさに会場から拍手が起こった。花売りが父と分かった場面で流れた「干瀬節」の伸びやかな高音が、琴線に触れた。
我如古弥栄作の歌劇「泊阿嘉」は、仲嶺眞永監修。
阿嘉の樽金(東江裕吉)は浜下りへ出かける伊佐の思鶴(儀間佳和子)に出会い、一目ぼれする。毎晩思鶴の屋敷がある泊高橋に通う。ふびんに思った乳母(金城真次)が樽金から恋文を預かり、思鶴に届ける。自らもひそかに樽金へ思いを寄せていた思鶴の内心を察した乳母が計らい、2人は結ばれる。しかし、父(高宮城実人)に命じられ、樽金は伊平屋勤務に。会えない苦しさで病にかかった思鶴は、乳母と父(仲嶺眞永)にみとられ息を引き取る。伊平屋から帰った樽金は思鶴の遺書を手に自らも死を選んだ。
儀間は抑えた感情の中に真意をにじませた演技で、自制心の強い思鶴のあふれる思いを表現した。乳母役の金城は喜怒哀楽を体いっぱいに演じ、この対比も物語に奥行きを与えた。ほかにも古典音楽の音曲やつらねが物語を効果的に彩った。
ハッピーエンドの「花売の縁」と異なり、悲劇的な結末を迎えた「泊阿嘉」。物語に共通する“再会”の喜びとはかなさを感じさせる、同時上演ならではの味わい深いプログラムだった。
(田吹遥子)