<金口木舌>「逆格差論」の精神は


<金口木舌>「逆格差論」の精神は
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 名護市宮里、宇茂佐の住民は市場や商店街などがあり、かつて「名護三箇」と呼ばれた東江、城、大兼久を訪ねることを「名護に行く」と言う。東江に旧名護市庁舎、古くは名護間切の番所もあった

▼この30年で国道沿いに多くの大型施設、量販店が立ち並んだ。だが、人々が捉える「名護の中心」は役所など行政機関があった名護三箇である
▼名護の「街のかたち」が大きく変わっていく。名護市はこのほど、市港の現庁舎を移転・建て替える方針を固めた。老朽化や津波など防災上の観点が理由
▼現庁舎は設計士グループ「象設計集団」が手掛け、1981年に完成した。独特のデザイン、風が通り抜ける設計は県内外で評価が高い。40年以上、街の景観と調和し、ランドマークだった建物は姿を消すかもしれない
▼庁舎建設の根底にあった「逆格差論」。都市部の大規模開発と一線を画し、風土に根ざした「暮らしやすさ」を名護の強みと捉えた。庁舎移転で利便性は向上するだろう。ただ自然・文化を大切に生きるという精神が薄らぐ気もしている。