<金口木舌>「県境」を越えた駅伝交流


<金口木舌>「県境」を越えた駅伝交流
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 鹿児島県与論町で旧暦3、8、10月の15日に奉納される国指定重要無形民俗文化財の与論十五夜踊り。「あーみたぼーり」(雨賜り)という演目から始まる

▼この踊りには雨乞いの意味が込められている。与論方言は沖縄と似ており、琉球諸語の一つとされる。踊りの場、与論城跡を訪ねると国頭の山々がはっきり見え、近さを改めて実感した

▼琉球と強い結びつきを持ち、鹿児島の文化とも混ざり合った独特の風習は島の魅力。沖縄の米統治時代、北緯27度線上に引かれた「国境」によって分断されても、島民は沖縄の苦難に心を寄せた

▼与論島では8年ぶりの開催となった18日のやんばる駅伝競走。島を挙げ、本島北部12市町村のランナーを温かく歓迎する姿があった。力を発揮し、初優勝を果たした地元・与論チームの快挙は大会を大いに盛り上げた

▼住民の1人は「鹿児島県民だが、文化は沖縄だ」と話してくれた。「きょうだい」とも称される沖縄本島や周辺離島と与論島。「県境」を越えた駅伝大会の交流は、島々の強い絆を見る思いがした。