<金口木舌>豊かな海を次の世代に


<金口木舌>豊かな海を次の世代に
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 浦添市の自然海岸カーミージーでタコ取りをしたことがある。10年ほど前の、大潮の夜、どこまでも続く浅瀬を息子と歩いた。取れたタコは小さかったが宝のような思い出だ

▼貝殻を魔よけに使うスイジガイの目玉は宇宙人のようだった。タツノオトシゴや瑠璃色の魚たちにときめいたのも、この海岸での体験。ティラジャー(マガキガイ)は友人が調理してくれた

▼東京にいた小学生時代、理科の授業でイノー(礁池)の教材映像をたびたび見た。しかし夏休みに家族で行く海水浴場にイノーはなかった。沖縄の豊かな海岸を守ってきた先人たちに感謝したい

▼子どもたちも海を守る。地元・港川小は海岸で生き物を調べ、環境について学ぶ。海岸道路建設で周辺の埋め立て計画が出た時、児童たちも保全活動を担った

▼この海で日米両政府が合意した那覇軍港の移設が進む。環境アセスメントの関連資料が公開中だ。385ページの行政文書に貴重な動植物が記されている。息子と取ったタコはどうだろう。思い出の詰まった宝の海を失いたくない。