<金口木舌>黒潮熱海、海は流れ


<金口木舌>黒潮熱海、海は流れ
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 大相撲名古屋場所で美ノ海が早々と勝ち越しを決め、賜杯争いにも絡む。敗戦でも見る側をしびれさせるが、真骨頂の地味なたたずまいは変わらず

▼幕内で「海」絡みのしこ名は美ノ海、佐田の海、平戸海、御嶽海、熱海富士、湘南乃海。それらに黒潮を感じつつ、太平洋の向こうにアメリカやハワイは本当にあるのだろうかと、毎日海を見ていた幼い日を思い返す

▼黒潮が四国沿岸から南に大きくそれる「黒潮大蛇行」が観測史上最長の7年間続く。通常は千葉県沖で「黒潮続流」となって東に流れていたはずの暖流が宮城県付近まで北上する

▼約200年前、土佐のジョン万次郎少年が黒潮大蛇行で漂流した説もあり、昔からあった現象のよう。しかし7年の長さは異例だ。歴史的なサンマの不漁、記録的な暑さを陸にもたらす海洋熱波。予想される影響は想像以上に大きい

▼県内で気温36度を記録した日、海辺の取材で目まいを感じながら、これが「災害級の暑さ」かとげんなりした。暑い暑いと右往左往する私たちのそばで、潮は黙って流れている。