今年のメサイア演奏会で指揮を務める指揮者・作曲家の天沼裕子に書面で抱負を聞いた。
―節目の演奏となる。今の意気込みは。
「50年の間には人々の心に残る名演が生まれたことでしょう。厳しい条件下での公演もあったろうとも想像できます。この節目であるメサイア公演に携わる合唱団員一人一人、指導者、伴奏者、ソリスト、沖響メンバー、琉球新報社、そして私は、一つのひしゃくです。先輩方が作り上げたこのメサイア大河から、清らかな音楽の流れをひしゃくで掬(すく)い、それを聴衆の皆さまとシェアし、また元の大河にお戻しする役目だと思っております。沖縄メサイアの歴史を次世代につなげる、清らかな一掬(すく)いでありたいと願っております」
―今回のアピールポイント、力を入れる点は。
「イエスその人に焦点を当て、そのドラマ性を打ち出しております。そのために枝葉を切り落とすかのように、勇気を持って選曲させていただきました。力を入れる点は音楽上では、和声進行の美しさや、ヘンデルの好んだ作曲技法を見逃さないよう努めます」
「耳になじんだ音楽であっても、楽曲分析や解釈により、新鮮に響くこともあるのではと思います。そして、メッセージ性の強い言葉を音楽に乗せてお届けする。これは、演奏者にとって究極の目的であり、実現至難な課題への挑戦となるでしょう。それが結実するか、聴衆の皆さまに審判を仰ぎたいと存じます」