コロナで大会中止…守礼門前を清掃した野球部、新聞記事で紹介 地域の応援実感、大会で快進撃


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 ユニホーム姿で手にしているのは、バットではなく竹ぼうき。2021年4月18日、那覇市立城北中の野球部は、地元の観光地・守礼門前を清掃していた。その日は大会で試合をしているはずだったが、新型コロナウイルスのまん延で中止になった。集大成の中体連は1カ月後。中止になるのでは―。やるせない不安感が部員を覆っていた。

コロナ禍でさまざまな制限がある中、努力して勝ち取った優勝旗を誇る城北中野球部のメンバー=7日、那覇市の同校

 「子どもたちの姿を見てほしい」。顧問や校長の依頼があり、清掃活動を取材した。生徒はマスク姿で入念に落ち葉を掃き、石垣の隙間の雑草まで丁寧に取り除いていた。ただ、きびきびとした動きに反し、表情には陰があった。悔しさは隠しきれていなかった。

 その時の様子は「地元貢献『今できること』」の見出しで報じた。扱いは教育面のトップ。大人の行動制限が緩む横で、けなげに対策を徹底し、大会に出ることを願う生徒を応援したかった。

 報道からしばらくたって、顧問から「大会で優勝した」と電話が入った。記事がきっかけで、生徒は地域から応援されていることを実感し、練習にも身が入っているという。野球部は快進撃を続け九州大会で3位の成績を残した。当時2年生だった現3年生も地区大会で優勝し、後に続いた。

 1年半ぶりに当時の生徒と再会した。3年の上原碧夏(ねお)さん(14)は「部活帰りに、近所のおじさんに『応援しているよー』と言われびっくりした。先生方も記事を拡大コピーして張り出していた」と教えてくれた。

 「おじさん」が上原さんに声を掛けたのは、記事を読んだから、とは限らない。優秀な成績を残せたのも、生徒自身の努力があったからだ。チームの目標は「応援したくなるチーム」。琉球新報が生徒のためにできたことは、ちょっとだけ応援することだけだった。 (稲福政俊)