音楽で辺野古伝えたい 河原さん、タイで基地被害訴え


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<演奏会「島の祈り」>音楽を通して辺野古の問題をタイで伝える河原弥生さん(中央)=7月26日、タイ北部のチェンマイ

 那覇市出身のミュージシャン河原弥生さん(38)がタイで音楽活動を通じて辺野古の新基地建設問題など沖縄の現状を現地に伝えている。7月下旬には自身がボーカルを務めるバンド「想音(うむいうとぅ)」が、タイ北部チェンマイのエイズ孤児らの施設「バーンロムサイ」で開かれた慈善行事で「島の祈り」と題して演奏会を開いた。

新基地建設反対の思いを込め、「ジュゴンの見える丘」(Cocco作)など11曲を熱唱した。
 河原さんは県内中学校で音楽補充教員をしていた。昨年3月、チェンマイ大で特別講師として彫刻の技術指導をしていた夫が事故で意識不明となり、夫の元に駆け付け看病を続けた。夫は意識を取り戻し、現在は現地で学生や教員と交流を続けているという。
 夫と同地で暮らすようになった河原さんは、チェンマイ大でタイ音楽について教鞭(きょうべん)を執るティティポン・カンティーウォン氏から「自分のコンサートで沖縄の曲を演奏してほしい」と頼まれた。演奏会で三線で「てぃんさぐぬ花」「童神(わらびがみ)」などを披露し、評判を呼んだ。
 7月26日にあったコンサートでは「沖縄の現状を知ってほしい」との思いを込め、太平洋戦争で沖縄は日本で唯一、住民を巻き込んだ地上戦を強いられたことや過重な基地負担に伴う被害があることなどを説明。「ジュゴンの見える丘」などを熱唱した。河原さんの歌声に涙を流す人もいたという。
 新基地建設に反対するのは13年前に亡くなった戦争体験者の祖父の存在がある。「脚に銃弾が入ったまま義眼で一生を過ごした。戦争で傷ついた祖父が残したのが『戦争は絶対にあってはならない』という言葉だった。生きていたらきっと新基地に反対したと思う」
 河原さんは辺野古問題に関する報道などを目にするたびに胸を痛める。「知事選で示された多くの民意を無視することに民主主義の危機を感じる。日本政府には多くの犠牲を払った沖縄の人々に何ができるか真剣に考えてほしい」。今後もタイで音楽を通じて沖縄の現状を伝えていくつもりだという。(松堂秀樹)