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広がる「やさしい日本語」 外国人増える今治市で活用  「は・さ・み」の法則意識して(愛媛新聞提供 ~パートナー社から~)


広がる「やさしい日本語」 外国人増える今治市で活用  「は・さ・み」の法則意識して(愛媛新聞提供 ~パートナー社から~) 外国人の生活支援などに取り組む「HAKUNA MATATA」の森仁己さん(右)。「やさしい日本語」で丁寧にやりとりをする=2023年11月下旬、愛媛県今治市内
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 新型コロナウイルスの流行が収まってから、外国人の姿を以前よりもよく見かけるようになった。調べてみると、全国の在留者は2023年6月末時点で322万人。過去最多になっていた。日本を訪れる人も増えている中、地域の外国人と交流する時に言葉の壁が立ちはだかる。愛媛新聞「真相追求 みんなの特報班」(通称・みん特)は国籍を問わないコミュニケーション手段の一つとして「やさしい日本語」の在り方を探った。

 「やさしい日本語」とは、普段使っている日本語を簡単で分かりやすい言い方に直して使う取り組み。外国人に緊急情報などを正しく伝えるため、阪神大震災をきっかけに始まった。

理解に合わせて言葉を選ぶ

 出入国在留管理庁によると、23年6月末時点の在留外国人は22年末より4・8%多い322万3858人。在留資格は「永住者」の27・3%が最も多く、「技能実習」の11・1%が次ぐ。

 技能実習生が多い今治市に住民登録する外国人は22年末時点で3102人。国籍はフィリピン、中国が約6割を占める。「必ずしも英語が得意ではなく『やさしい日本語』が最も分かりやすいと言う在留者も意外といる」。「やさしい日本語」を普及する同市のグループ「HAKUNA MATATA(ハクナマタタ)」はそう説明する。

 グループが生活支援をする飲食店勤務のネパール人男性(33)は15年に来日し、仕事などでの日本人との会話は簡単な日本語を使う。新型コロナ禍が明けた今夏、小学校高学年の娘を呼び寄せたところ、学校関係のやりとりに苦労した。

 グループの森仁己さん(52)は、漢字や専門用語が多い学校費用の口座振替のプリント類などの内容を口頭で説明を加えてサポート。「相手の理解に合わせて言葉を選び、ジェスチャーで伝えたり文章にルビを振ったりするのも効果的」と語る。

はっきり、さいごまで、みじかく

 「やさしい日本語」は難しい表現を使わず「はっきり、さいごまで、みじかく言う」の最初の文字を取った「ハサミの法則」が基本になる。避けるべきなのは「です」「ます」以外の複雑な敬語▷「たぶん」「できないことはない」などの曖昧な表現▷「がんがん」などの擬音語や「うろうろ」などの擬態語―。方言も伝わりにくいという。

 スマートフォンの翻訳アプリは正しく訳されない場合もあり、頼り過ぎるのは良くない。互いに理解した気になって会話を終わらせず「分かったかどうかの念押しは大切。全てを簡単に直したらいいわけではなく、生活する上で覚えておいた方がいい用語はきちんと教えてあげてほしい」と助言する。

 今治明徳短期大の留学生・王明亮さん(31)も「書類にカタカナがいっぱいあって難しかった」と新型コロナワクチンを打った時の手続きを振り返る。間違えたらいけないと思い、相談窓口を訪れたという。

 市は23年度、燃料費高騰を受けて全世帯に配った燃料支援クーポンの説明文書に「やさしい日本語」を記載。クーポンについて「5000円です」「別の紙のガソリンスタンドで使えます」などとルビ付きで表した。

 「やさしい日本語」は外国人に限らず、子どもや高齢者ら誰にでも分かりやすい言葉とされ「思いやりの延長線上にある」と森さん。「逆の立場になったらどうしてほしいか」考えるように意識しており「コミュニケーション手段の一つとして広がってほしい」と願っている。

(愛媛新聞・中野貴衣)