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「ごみ箱がなくなって困ってます」 撤去進む街中、見直す観光地(中国新聞提供 ~パートナー社から~)


「ごみ箱がなくなって困ってます」 撤去進む街中、見直す観光地(中国新聞提供 ~パートナー社から~) 原爆ドーム前のベンチで「ごみ箱がなくなって困った」と話す大学生
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「原爆ドームそばにあったごみ箱がなくなった。困ってます」。広島県安芸太田町の大学3年女性(21)から、そんな声が寄せられた。平和記念公園(広島市中区)のベンチで普段通りおにぎりを食べ、包みを捨てようとして気付いたという。街中のごみ箱は「置けば環境悪化を招く」として減っている。一方で取材を進めると、観光地を中心に今、その必要性が改めて注目されていた。

 まず平和記念公園を管理する市緑政課に尋ねた。先進7カ国首脳会議(G7サミット)直前の昨年5月15日、園内のごみ箱16基のうちドーム近くの3基を撤去し、今もそのままという。

 通りに近いこの3基は公園の利用者以外も大勢が使う。日1回の収集では間に合わず、家庭ごみの持ち込みといったマナー違反もあった。小林一申課長は「ドームの景観が損なわれ、放火の危険も想定される。見過ごせない」と強調する。 
ごみが持ち込まれ、かえって衛生環境が悪くなる―。街中のごみ箱はこうした理由で消えている。取材の結果を女性に伝えると「とはいえ、困る場面って多いですよね」とため息をついた。

撤去前のごみ箱。日1回の収集では追いつかず、ごみがあふれていた(広島市提供)

 外国人観光客も戸惑っているようだ。観光庁の2019年調査では、日本旅行中の困り事は「ごみ箱の少なさ」(23・4%)がトップ。言葉の問題などを抑えている。

 こうした声を受け、各観光地ではごみ箱を再び置く動きも出ている。例えば食べ歩きが人気の大阪・道頓堀。ぽい捨てで汚れる街をどうにかしようと地元商店会や旅行会社が連携し、昨年11月に10カ所置いた。

 収集など管理の手間を減らすため、設置したのがスマートごみ箱「SmaGO(スマゴ)」だ。ごみを自動で圧縮でき、リモートで蓄積状況も分かる。商店会事務局は「『ごみ箱はなくしてきたのに』と驚く声もあったが、観光リピーターを生むには必要」と力を込める。観光客が消えた新型コロナウイルス禍を経て、まちづくりへの思いが強まったという。

 身近なところでも模索が始まっていた。広島県の観光地、宮島(廿日市市)。ごみは持ち帰りを促している。ただ来島者がコロナ禍前の水準に戻り、テイクアウトの店も増えている。市の清水俊文・宮島まちづくり推進担当課長は「おもてなしの観点からいま一歩、対策を進めたい」。適切な管理下での設置の是非を住民や事業者、観光関係者と話し合うという。

 街中のごみ箱のありようは時代と共に移り変わってきた。広島市は1994年の広島アジア大会を機に、街路に相次ぎ設置。97年には400カ所(当時は灰皿付き)に上ったが、2012年度に美化推進のため減らす方針に転換し、今は8カ所しかない。

 実はそのうち2カ所は道頓堀と同じスマゴ。ごみがあふれにくくなる効果があり、市は「順次切り替えたい」としつつ、増設は予定していない。再び転換期にあるかもしれない街中のごみ箱。10年後はどんな存在になっているだろう。

この記事を書いたのは
中国新聞・新本恭子 (社会担当)

街中のごみ箱は10年の間に灰皿付きから「スマート」へ。ずいぶんな変化ですが、スマゴの使用感は普通のごみ箱と同じでした。

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