「どうして、本来は行政がやるべき道路の白線の引き直しを、私が負担しないといけないのでしょうか?」。神奈川県平塚市在住の自営業の50代男性から神奈川新聞「追う! マイ・カナガワ」取材班に寄せられた疑問。職業柄、交通事故を見聞きする機会も少なくない記者が、現場へと向かった。
平塚市東部の住宅街。国道129号から1本入った地区には住宅や店舗、駐車場などが点在している。道路の拡張計画があるようで、東西を走る市道沿いは建物が少なく、見通しもよい。
男性は昨年、「湘南新道」の整備に伴い県に土地を売却。売却した道路計画予定地には所有するアパートが建っていたため解体し、今年に入って道路から少し下がった場所に新たに建設を始めたという。その際、地中にある上下水道のつなぎ換え工事も業者に依頼。一部道路を掘り返して工事は無事終了したものの、男性には疑問が残った。「(復旧のため)道路の舗装をし直した部分とは別の部分まで、白線が新たに引かれている」
男性によると、工事前の路上は横断歩道などの白線が消えかかっていた。白線の引き直し工事の詳細な金額は不明だが、「5万~10万円程度ではないか」とのこと。それがすべて男性の負担となっていた。男性は「工事と無関係な消えかかった部分は、本来なら横断歩道や停止線を管理する行政が工事費を負担するべきだ。割合に応じて負担額を決めるべきではないか」と憤る。
横断歩道を部分的に引くのと、全体を引くのとで費用は異なるのか―。気になった記者は白線工事を手がける業者に尋ねた。担当者は「変わるかどうかは、業者次第だと思います。変わらないケースもあれば、変わる場合も考えられます」とのことだった。これではどれぐらい怒っていいのか分からない。
そもそもなぜ、このような事態になったのか。男性に応対した市土木総務課を取材した。同課によると、今回の工事は当初の想定よりも道路を掘り起こす範囲が少なくなった。その上で、「工事業者にお願いベースで、停止線や横断歩道全体の引き直しを依頼したところOKが出たので、話を進めた」と説明する。業者への「お願い」が男性には伝わっていなかったことが原因だったようだ。
では、男性が支払った工事代金について返還や折半ができるかどうか尋ねると「工事主の都合で工事が行われた場合、行政で負担はできない」という。“自作自演”的な感じでモヤモヤしたものも残るが、同課は「横断歩道を管理する平塚署ともよく協議するべきだった」と反省。「今後は気を付けていきたい」としている。
今回は行政側の費用負担はなかったが、男性は白線の引き直し自体には納得している。横断歩道を引き直したことで、横断者のために停止してくれる車が圧倒的に増えたという。平塚市に限らず、道路の白線が消えかかっているケースは各地で散見される。行政により速やかに改善され、事故防止につながることを願ってやまない。
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