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町内会の脱会・入会拒否が増「このままだと運営できなくなる…」役員なり手不足、会費減も懸念(愛媛新聞提供~JODパートナー社から~)


町内会の脱会・入会拒否が増「このままだと運営できなくなる…」役員なり手不足、会費減も懸念(愛媛新聞提供~JODパートナー社から~) 松山市が町内会加入促進のために配布しているチラシ
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 「最近、町内会の脱会や、入会拒否が増えている。このまま会員が減れば運営できなくなるのではないか」。松山市の80代男性から、愛媛新聞「真相追求 みんなの特報班」(通称・みん特)に悩みが寄せられた。話を聞くと、岐路にさしかかる町内会の姿が垣間見えた。

 市中心部に近い住宅街に住む男性によると、地元の町内会(現在の加入は約65軒)の未加入世帯は、約20年前に1軒だったが、今は約1割に増加。転入者に加入を呼びかけるが、若い世代では入会を拒む例が珍しくない。「役員をするのはしんどい」などの理由で脱会する高齢者も増えている。

 神事の取りやめなど行事は縮小し、交流も減り「隣は何をする人ぞ状態」(男性)。役員のなり手は不足し、組織を再編して役員数を削減し、任期も短縮したが解決せず、今は強制的に順番で回す。

 会費は年間5千円弱で、防犯灯や街灯の電気代、校区や公民館、防犯活動の負担金、各種募金への寄付などに充てる。会員が減れば、費用負担の問題も生じかねない。

ごみ集積場管理 不平等感も

 目下、男性を悩ませているのが、ごみ問題だ。男性の地域では、町内会がごみ集積場所を設置し、カラスよけのネット張りや掃除を行う。町内会に入っていない人もごみは出し「『ただ乗り』のような状態だが『使うな』とは言えない」と男性。猛暑での管理はこたえるとし「未加入世帯が増えたらどうなるか、一人一人が考えないといけない」と語る。

 市によると、市が把握する約千の町内会(自治会、2023年6月時点)の加入率は23年度が70・9%。約3割が未加入になる。市では、住民生活を支える基盤の町内会への加入を啓発するため、会の役割や意義を紹介するチラシを転入手続き時に配布。松山宅建協会に家探しをする人に渡すよう依頼もする。ただ、「町内会は任意組織で、入会の強制はできない」(市まちづくり推進課)。

 男性が悩むごみ問題についても市に聞いた。市清掃課によると、家庭ごみの収集・運搬・処分は自治体が行う業務と法律で定められているが、集積場所の設置や維持管理は地元が担う。松山市の場合、可燃ごみなら15世帯以上で作業の安全性が確保されているなどの収集要件を満たせば、町内会でなくても集積場所を作れる。だが、自分たちで維持管理しなければならないことに変わりはない。

町内会・自治会の本質的な役割とは?

 町内会活動をめぐっては、地域によっては行事の多さが煩わしいとの声もある。

 町内会や自治会の調査研究を行う放送大の玉野和志教授=地域社会学・都市社会学=は「全国的に、若い人はかつてのように当たり前に加入する意識はなく、会も高齢化し力をなくしつつある」と説明。「市民がボランティア的な貢献をしても損ではないと思える条件をつくらなければ活動は維持できず、住民間の対立を生む」と警鐘を鳴らす。

 「行政と市民の協働」のあり方には「『これまで(町内会が)やっていたから当然』ではなく、不満が出れば調整が必要」と指摘。町内会・自治会の本質的な役割は「自分たちで地域の問題を解決する話し合いの場所だ」とし、本来の地域自治の実現へ、行政と市民の意思決定の場と考えるといいのではないかとしている。 (中田佐知子)

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