平べったい体の謎
沖縄の海でダイビングすると、たくさんのサンゴが見られます。枝状やテーブル状、丸いかたまり状など、いろいろな形があって楽しいです。サンゴはもともと浅い干潟にも生えていましたが、こちらは温暖化による白化や、赤土、農薬などの影響もあって、大部分が消えてしまいました。今は、小ぶりのサンゴが少しずつ復活している最中です。
さて、枝状のサンゴを見つけたら、枝の隙間をそっとのぞいてみてください。小さなカニが隠れていませんか。サンゴガニの仲間です。ミドリイシというサンゴには、クロエリサンゴガニやヒメサンゴガニが隠れています。とても小さく、甲羅がわずか3ミリ程度から1センチくらい。サンゴの枝の隙間を歩きやすいよう、平べったい体をしています。
彼らがサンゴに住むのは、敵から隠れるためと、ご飯をもらうため。サンゴは、自分の体を透明な粘液で守っているのですが、この粘液が、サンゴガニのご飯になるのです。サンゴガニの足の先には硬い毛が何本も生えていて、これで粘液を絡め取って口に運びます。
ブロッコリーのようなモコモコした形のハナヤサイサンゴにいたのは、オレンジ色に赤いあみ目模様のアミメサンゴガニ。まるでアイドルのような可愛らしさです。小さなサンゴにはカニが1〜2匹しか住めませんが、サンゴが大きくなれば、複数のペアがひとかたまりのサンゴに暮らすようになります。
今回見つけたアミメサンゴガニは、メスがお腹にオレンジ色の卵を抱いていました。サンゴがもっともっと復活して、カニのお家が増えるといいですね。
Vol. 23 アミメサンゴガニ
Trapezia areolata
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:サンゴガニ科 Trapeziidae
● 属:サンゴガニ属 Trapezia
動画撮影:
クロエリサンゴガニとヒメサンゴガニ 2019年12月12日(浦添市・伊奈武瀬)
クロエリサンゴガニ 2020年1月9日(浦添市・伊奈武瀬)
アミメサンゴガニ 2020年1月11日(浦添市・伊奈武瀬)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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