1月に発生した新型肺炎(以下、新型コロナウィルス)をめぐり、インターネット上では不確かな情報や噂、あるいは「デマ」が度々拡散されています。
「用心するに越したことはない」と、軽い気持ちで広げているのかもしれませんが、情報が錯綜することで、関係機関の対応が無駄に増え、現場が混乱することが予想されます。
また、デマは私たちに偏見や差別意識をもたらす効果もあります。
この機会に「デマの影響」を意識してみましょう。
どんなデマが出ているのか?
今回の新型コロナウィルスを巡っては、「◯◯でも感染者が出たらしい」と噂レベルのものから、「中国人観光客が空港から検査前に逃げた。USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に遊びに行きたいから」と具体的な施設名が出たものまで、様々な種類のデマが流布されました。
先に指摘おきたいのは、上にあげた二つの誤った情報は、ともに「Share News Japan」というまとめサイトが拡散させているということです。
まとめサイトとは、「ネット上の書き込みをまとめた」という体裁で記事が構築されるWebサイトです。情報の正確性よりもアクセス数を重視し、「分かりやすくキャッチー」でサクッと読めるようにまとめているのが特徴です。
デマの拡散力=「重要さ」×「曖昧さ」
実は、デマの広がりには方程式があります。
R=I×A
Rはデマの広がり、Iは内容の「重要さ」、Aは内容の「曖昧さ」です。
この連載の1回目にも、同じ説明を行っています。
ネットで広がるデマ情報 方程式と3つの対策 モバプリの知っ得![1]
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-477432.html
新型コロナウィルスの感染者で亡くなった方もいるため「重要さ」は大きく、新型のウィルス!ととらえると「曖昧さ」も大きくなります。
そのため、新型コロナウィルスをめぐっては、デマや誤情報が広がりやすい下地があったと言えます。他にも「重要さ」「曖昧さ」が増すのは、大きな災害の時など、近年では「デマの傾向と対策」が取れるくらい、〝お約束〟になってきています。
これまでもずっと繰り返されてきたので、「重要さ」「曖昧さ」を意識し、翻弄されないようにしましょう。
デマがもたらすもの
SNSで噂・誤情報・デマを拡散させている人たちの中には、本当に信じているわけではなく「用心するに越したことはない」という軽い気持ちの人も多いと思います。
しかし、誤った情報が拡散されることで、関係機関などの現場が対応に追われます。
ただでさえ大変な時期に、「デマ対応」の仕事も増え、対策や復興が遅れるということです。
2016年の熊本地震の際には、「動物園からライオンが逃げた」とデマを拡散させた男が、業務妨害で逮捕されました。
また、誤った情報を拡散させることで「曖昧さ」が増し、さらなるデマを誘発させる可能性があることも意識しましょう。
そして、デマによって「差別意識」も拡散されます。
「曖昧さ」の目は、外国人などのマイノリティ、地域の「よそ者」に向けられ、災害時には必ずと言っていいほど「外国人が被災地で泥棒をしている」と言ったような噂が広がります。
今回も「関空から中国人が逃げた」というデマの背景には、「わがままで日本人に迷惑をかける中国人」という差別意識がにじみ出ています。
「コロナウィルス治療で日本の健康保険制度が悪用されている!」に至っては、「卑怯でずるい中国人」という差別意識がどストレートに現れています。
日本でも、感染を防ぐという名目で「中国人お断り」と掲げたお店も出てきました。しかし、中国はとても広く人口も多いため、「お断り」の効果や合理性は不明です。
そんな中、欧州では「アジア人お断り」という風潮が出てきました。
「まるでアジア系全員が保菌者扱い」新型肺炎で人種差別相次ぐ、欧州
https://www.afpbb.com/articles/-/3266066
これを見た私たちは「アジア人みんなが感染しているわけではなんだけどな・・・」と困惑し、アジア人が差別されることに悲しい気持ちになると思います。
日本国内における「中国人お断り」と、構図はかなり似ていますね。
私たちは無自覚に差別を行うと同時に、状況が変われば「差別される側」にもなります。
(国内での感染者は出てはいるものの)外国で発生した感染症でここまでの誤情報が広がることを考えると、自国で発生した際にはさらなる誤情報が出てくることも予想されます。
いま、私たちにできることは、「手洗いなどで感染に備える」と直接的な対策とともに、「誰・どんなサイトが誤情報を流しているのか」と情報の見極めを意識することではないでしょうか。
琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」2月2日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。
親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。
【プロフィル】
モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。