人が辞めない組織がやっていること【働き方改革@沖縄(21)】

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働き方改革@沖縄
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筆者は組織コンサルタントとして、「今いる人材の能力を最大限に発揮し、成長する組織をどう作っていくか」という点で、組織づくりのアドバイスをしています。
その中で、「社内の課題が山積していて、さらに人も定着しない」という相談を多く頂きます。
社内の課題として、例えば下記のような声が聞かれます。
・組織の方向性が浸透していない
・現場を回すので必死で、本当の課題に向き合えない
・部署間で軋轢があり協力して仕事に取り組めていない
・上司部下、みんな忙しそうにしているが何の仕事をしているのかよくわからない
・メンバー間の意見や考えを共有する場がない・・・

こうした状況は、経営者にとっても現場にとっても望ましいことではなく、さらにこうした状況がどんどん悪化していくと、社員の離職が相次ぐということにもなりかねません。
ところが、「うちの会社はだからダメなんだよね」と言うだけで、問題が解決されないまま放置されているケースが多いです。
「どうすればこの問題を解決できるのか」
「自分たちにとって理想的な組織にするには、何が必要か」といった点が、現場で話し合われてないことがほとんどで、経営者や管理職、現場スタッフに問題意識があるにも関わらず、具体的なアクションに繋がっていないという企業がとても多いと感じます。



働き方改革@沖縄

◇執筆者プロフィル

波上こずみ(なみのうえ・こずみ)
Cosmic Consulting(コズミックコンサルティング)代表。組織コンサルタント。

子育て・介護と仕事との両立に苦しんだ経験を踏まえ、2016年に起業。
「働く人のモチベーションを組織の活力へ!」をテーマに、沖縄の企業や個人を対象としたコンサルティングを手掛けている。
那覇市首里生まれ。1男1女の2児の育児中。




メンタルモデル



「メンタルモデル」という言葉をご存知でしょうか。
平たく言うと、私たちの頭の中にある「ああなったらこうなる」というような頭の中のイメージのことを言います。人間は一人ひとり生まれ育った環境や経験した背景が異なり、その中で経験した様々ことがメンタルモデルとして自分の頭の中に存在します。7割〜8割はそのメンタルモデルに沿って無意識下で行動し、顕在意識で考えてとる行動は2割〜3割に過ぎないと言われています。

例えば、こういう事例。



「Aさん」と「Bさん」の二人が一緒に歩いていたとします。その時、前方に犬が現れました。

「Aさん」は幼少の時に犬に噛まれた経験があり、犬のことが怖いと思っています。
一方「Bさん」は、小さい頃から犬を飼っていて、犬のことが大好きです。

このとき、「Aさん」は反射的にその犬を避けようとしました。
一方「Bさん」は、その犬に近寄り犬を撫でました。



犬が歩いているという一つの事実に対して、AさんとBさんがとった行動は大きく異なります。それぞれ過去の経験が二人のメンタルモデルを形成していて、その結果異なる行動が現れたのです。

実はメンタルモデルは、社会や生活の中、そして企業活動の事象にもその違いが現れています。

例えば、行政機関において「報告書」というのは、予算に対しての効果測定につながる大変重要な資料であり、その内容、ボリューム、事業効果の見せ方など、その作業に大きな労力を費やし、工夫を凝らしながらその作成を行います。行政機関で働いていると、「報告書作成とはそういうもの」という概念が定着していると考えられます。
一方、サービス業や接客業などをはじめとする民間企業においては、端的にわかりやすく事実を書き記すのが「報告書」であり、時間を費やすべき仕事はお客様と接することが最優先だと考えるでしょう。
このように業界によっても様々なメンタルモデルがあり、潜在的にそのメンタルモデルに従って、仕事を行なっています。

さらに、「この仕事はこうするものでしょ」「こうした顧客に対しては、こんな対応が最も適切だ」というような部署間、階層間、世代間など社内の中でもメンタルモデルは存在します。

このメンタルモデル、それぞれの違いがあることが問題ではありません。
そもそもこのメンタルモデルのことを知らずに、「自分が一番正しい」と思い込んでしまい、他のメンバーの言動に対して矢印を向け非難をし始めること。それが社内の不協和音を生み出すことに繋がるのです。

特に多様性の時代、様々なメンタルモデルを持った人材が組織の中にいるにも関わらず、「あいつは間違っている」といって自分の考えや経験に固執し過ぎ、他責が始まると、企業の成長どころか、メンバー間の関係性が悪化します。さらにその違いに向き合おうとせず、「だからうちの会社はダメなんだ」とその課題を自分事化せずに問題を放置してしまっては、業務にまで悪影響が出てきてしまいます。

まずは、メンタルモデルというものがあるんだという概念を理解して、何かもやもやとする事象が起きた時に、なぜ自分がもやもやしているのか、自分自身がどんなメンタルモデルを持っているのかという自分自身に矢印を向けて内省して頂きたいと思います。その上で、他者はどんなメンタルモデルを持っているのか、対話によってその違いを導き出し、改善策を見出していくことが「他者と協働する」にあたって、重要なポイントです。

さらに、お互い違うメンタルモデルを持っているメンバーが集まっていることを前提に、
・なぜ課題が起こっているのか
・本当はどういう組織にしていきたいのか
・良くするためにはどんなアクションが必要か
といったことに、真摯に向き合って話し合うことが組織活性の一歩に繋がります。



ちょっと待って、アクションの前に



ある企業の事例をご紹介します。

「社員が育つ環境にしたい」という経営者からのご相談。
実際にどういう事象が起こっているのかをヒアリングしてみたところ
・何となく現場を回している
・他部署に対して理解が浅い(対立している)
・管理職がマネジメントできていない
ということが課題として挙げられました。

「この課題解決のために人材育成のプログラムを導入したい」というご希望があったのですが、実際に現場で起こっている事象に対して、何がその事象を引き起こしているのかということまで深掘りができておらず、人材育成プログラムをその時点で導入することが最善策なのかどうか懐疑的でした。

そこで育成プログラムを導入する前に、管理職のメンバーを集めて全員の思いを共有する場を設定し、
「皆さんはこの企業を良い組織にしたいと思っていますか」という問いを投げかけました。
その場に集められることすら納得がいかない管理職もいましたが、この問いに関しては
「いい組織にしたいのは当然だ」と全員一致で思いを再確認しました。

そこから、
「みんなが働きやすく生き生きとした組織にするためにどうしたらいいか」
というテーマに基づいて、議論を展開。多くの意見が交わされました。
それからも定期的に、何度もこのテーマについて議論を交わし、具体的なアクションを導き出そうと取り組んでいます。


働き方改革@沖縄
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最初はこうしたミーティング自体に意味を感じていないというメンバーや、表面的にその場にいるだけのメンバーもいましたが、対話を重ねていくうちに、
「理想の管理職像とはかけ離れていて、自分は管理職としては適さないのではないか」
「他部署のことまで気にしていたら、自分の部署の現場スタッフに負担をかけてしまう」
というように、最初に課題として挙げられた事象の裏にある管理職の本音やメンタルモデルが現れてきました。

このように、現場サイドで課題に向き合うための対話や、なぜ課題が起こっているかという深掘りした議論をおざなりにしたまま、対処療法的に改善のアクションを起こしても、課題の本質には手が届かず、恐らく組織改善には繋がらないことが想定されます。

逆に言うと、
「どういう組織にしていきたいか」
「こういうことが課題だと思うけどどう考えるか」
「なぜその課題が起こっていると思うか」
といった、企業内の課題に対して、現場でしっかり対話を重ねて向き合い、具体的なアクションにつなげていく組織こそが、人が生き生きと働き、成長する組織と言えます。

このように、戦略や制度といった組織のハード面だけではなく、人や関係性、業務プロセスといったソフト面に働きかけ、組織力を強化するアプローチのことを「組織開発」といいます。昨今では、人材育成、人事評価制度、業務改善、職場環境づくりといった一つ一つの施策だけぶつ切りに取り組みをしていくのではなく、「今組織で何が起こっているか、その問題を引き起こしている隠れた真因は何か」と組織全体に目を向け、対話によってそのアクションを導き出していく組織開発のアプローチが有効になってきています。組織開発が進んでいくと、職場メンバー間での対話や自主的な取り組みによって「心理的安全性」が高まり、チャレンジが推奨される企業文化を作っていくことが可能です。働く社員は心身共に健康で仕事にやりがいを感じ、生き生きとした成長する組織となっていくのです。

社員が力を発揮する「心理的安全性」のある職場になるヒント 【働き方改革@沖縄(15)】
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-956333.html



多様な人材が集う時代だからこそ



フルタイムでバリバリ働く社員、
子育て中で制約がある中でも強みを生かしながら働く社員、
介護をしながらチームマネジメントをする管理職、
全く違う業界で働く経験を持ち、今までとは異なる視点でアイディアを出す中途入社の社員など・・・

同質な人材が集まりやすかった前時代型の組織と比較して、今は多様な人材が一つの組織にいることが当たり前になっています。
多様な人材がいるからこそ、対話を重ね、社内コミュニケーションの質を高めて、社内の課題に向き合い働きかけを行う「組織開発」を進めることで、組織活性に繋がりひいては一人ひとりの社員が生き生きと働くことに繋がっていきます。


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皆さんの組織では、社内の課題について向き合う場はありますか。
なぜその課題が起こっているのか、真因について対話をしたことがありますか。

まずは、みんなで向き合い、対話を重ねてみましょう!
自分がどのように考え、社内のメンバーが何を望んでいるのか共有し、明るい未来を描きながら自分達の組織について真摯に考えて動き出しましょう!
生き生きと働く人が増え、沖縄で成長する組織が増えることを心から願っています。



【執筆者プロフィル】

波上こずみ(なみのうえ・こずみ)
Cosmic Consulting(コズミックコンサルティング)代表。組織コンサルタント

那覇市首里出身。株式会社JTBワールド、一般財団法人沖縄観光コンベンションビューローを経て、2016年Cosmic Consulting設立。
【働く人の生き生きを組織の活力へ】をビジョンとし、主に働き方改革や人材定着、人材育成プログラム構築、組織開発など、人事面から変革を起こすための組織活性コンサルティングを行っており、マスコミ、福祉法人、ホテル業界、飲食業界等、多種多様な業界に対してのべ100社以上のコンサルティング実績を持つ。
コズミックコンサルティングのHP → http://kozumi-naminoue.com/




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