【動画】海藻の生えた岩そっくり 〜ワタクズガニの仲間〜 <沖縄・海の生き物たち Vol. 46>


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器用でマメ!体のもしゃもしゃ再利用も☆

海の生きものには、周りの環境とそっくりの見かけをして、風景の中に溶け込んでしまうものがたくさんいます。今回紹介するのも、浅瀬の岩の上によくいるけれど、じっとしていたら絶対に気づかない、ワタクズガニの仲間です。

この仲間、とにかく体中に細かい海藻が生えて、もしゃもしゃ。いろいろな海藻が生えていますが、勝手に甲羅に生えてくるわけではありません。この海藻、実はカニが自分で甲羅にくっつけているんです。

試しに、カニの甲羅から海藻を外すと、本来の甲羅の形は四角くて平たい。よく見ると、甲羅にはかぎ針のような形をした毛が、たくさん生えています。そのまま観察していると、カニは甲羅が裸のままでは落ち着かないらしく、周りの海藻をはさみでちぎって、自分の体にくっつけ始めました。小さなハサミで海藻をちぎると、一度口元に運んで、海藻の根元を噛んでほぐし、甲羅の毛に引っかかりやすくします。それから、甲羅に小刻みに押し付けて、毛に引っ掛けます。カニの多くは自分のハサミが背中には届きませんが、ワタクズガニの仲間は器用に背中の上にもハサミを回して、海藻を満遍なくつけていきます。

全部つけ終わったら、一安心…、いやちょっと待って。カニは脱皮するんですよね。その時はどうするかというと、脱いだ殻についている海藻を、なんと新しい甲羅につけ直します!けっこう器用でマメ。海藻はカモフラージュだけでなく、自分のご飯にもなるので、ちゃんとリユース。小さな海藻も無駄にはしない暮らしです。

Vol. 46 ヒラワタクズガニ

Micippa platipes

● 目:十脚目 Decapoda

● 科:クモガニ科 Majidae

● 属:ワタクズガニ属 Micippa

 

動画撮影: 

ヒラワタクズガニ 2021年6月26日(浦添市 西海岸パルコ前)
 

動画撮影・編集&執筆

鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)

琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。

鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)

東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。

 

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