カモフラージュの動きはさまざま…
イノーの中、海草の生える砂地には、小さな生きものたちが隠れています。海草の根元には、茶色く枯れた葉がボサボサとついているのですが、それとそっくりの色をしたツマジロオコゼやヒメソバガラガニ、マイヒメエビ。みんな、枯れ葉の茶色に、まるでサンゴの砂粒や虫食いあとのような白い点々もようが共通しています。これが、海草の根元ではカモフラージュになるんです。
彼らを驚かさないように観察すると、独特の動き方を見せてくれます。ツマジロオコゼは、時々横にふらっ、ふらっと倒れるような動き。ヒメソバガラガニは、普段は石の下に隠れていますが、出てきたところを見ていたら、腕立て伏せのような動き。マイヒメエビも、移動するときは小さなジャンプを繰り返しながら、時々腕立て伏せのような動きを見せます。これはみな、筋トレをしている…わけではなく、実は波に揺れる海草の枯葉の動きを真似しているのだと思われます。
イソクズガニやワタクズガニの仲間は、背中や足が小さな海藻で覆われています。カニがじっとしていると、海藻の生えた岩と見分けがつきません。これは、勝手に海藻が生えたのではなく、自分で海藻をちぎって、甲羅に生えているかぎ針のような毛に引っ掛けて、カモフラージュをしているんです。そして、さらに波に揺れる海藻になったつもりで、かっくん、かっくんとランダムな動きをします。
水深10cmしかないような浅瀬に広がる、わずか数cmの生きものたちの世界。お天気の良い日に、そーっと覗いてみてくださいね。
Vol. 40 マイヒメエビ
Leander tenuicornis
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:テナガエビ科 Palaemonidae
● 属:マイヒメエビ属 Leander
動画撮影:
ツマジロオコゼ 2021年3月30日(浦添市 西海岸パルコ前)
ヒメソバガラガニ 2021年3月31日(浦添市 西海岸パルコ前)
イソクズガニの仲間2種 2021年3月30日(浦添市 西海岸パルコ前)
マイヒメエビ 2021年3月30日(浦添市 西海岸パルコ前)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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