サンゴ礁の浅瀬には、ユニークな生き物が色々いますね。岩場の上にしゃがみ込んでじーっと見ていると、しばしば見つけるのがこれ。5cmくらいの大きさの、薄っぺらいものが、ごつごつした岩の上をスルスルとなめらかに動いていきます。「ヒラムシ」です。
ヒラムシは、文字通り平べったい生き物。扁形(へんけい)動物の仲間です。理科の教科書で、プラナリアという生き物について習ったことはありますか? これも扁形動物。プラナリアは川に住んでいますが、ヒラムシは海で暮らしています。
沖縄の海辺でおそらく一番よく見るのは、ヒョウモンヒラムシ。くすんだ紫色から茶褐色の細かい班点模様が、全身にあります。彼らが歩き回るのは、エサ探しのため。大好物は、小さなカニやテッポウエビなどの甲殻類です。ヒラムシは狭い岩の隙間にも自由自在に入り込めるので、逃げて隠れるカニやエビをいくらでも追いかけることができます。
この、「どこにでも入り込める」ことそのものが、彼らの武器。そうして、追い詰めた獲物の上におおいかぶさってしまいます。そして体の真ん中の下側にある口で、獲物を包むようにしてから消化します。包まれたカニが暴れる様子は見えないので、どうやらおとなしくさせる化学物質を出しているのかもしれません。
自分が小さなカニだったら…と想像すると、こんな生き物に襲われたくないなぁ、と思わずカニに同情したくなる、柔らかくて薄っぺらいけれど、獰猛なハンターなのです。
Vol. 7 ヒョウモンヒラムシ
Ilyella gigas
● 目:多岐腸目 Polycladida
● 科:Ilyplanidae 科 Ilyplanidae
● 属:Ilyella 属 Ilyella
動画撮影:ヒョウモンヒラムシ 2018年 10月 8日 場所:屋嘉田潟原(恩納村)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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