沖縄の浅い潮だまりの岩陰に、小さな柔らかい生き物が隠れています。海藻にまぎれて、じっとしていると気づかない。でも、ふと近づくと、鮮やかな青いリングを煌めかせ、宝石のように美しい…。オオマルモンダコ、有名なヒョウモンダコの仲間です。ヒョウモンダコの模様は、頭(本当は胴体)がライン状で足の部分がリング状ですが、オオマルモンダコは全身がリング状です。
胴体はわずか2cm足らず。これで大人の大きさです。皮膚には色素胞という細胞があり、周りの筋肉で伸ばしたり縮めたりして体の色を変えるほか、皮膚の形も滑らかにしたり、海藻そっくりの細かいでっぱりを作って周囲にまぎれたり。
唾液にテトロドトキシンという猛毒を持ち、これで小型のカニなどを捉えます。フグ毒と同じなので、人が噛まれたら死にます!ところが、コウイカの仲間がこのタコを食べる映像を見ました。コウイカには毒が効かないんでしょうか。
毒を持つ生き物は、自分を目立たせて、これ以上近づくな!というアピールをすることが多いです。青いリングもその印。絶対に手を出さず、その美しさを眺めるだけにしておきましょう。
Vol. 1 オオマルモンダコ
Hapalochlaena lunulata
● 目:タコ目 Octopoda
● 科:マダコ科 Octopodidae
● 属:ヒョウモンダコ属 Hapalochlaena
(動画撮影:2015年1月、浦添市)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。