サンゴ礁のお留守番
サンゴ礁は生き物が豊かでにぎやか、というイメージですが、中には結構厳しい環境もあります。例えばイノーの先の礁縁部、リーフエッジと呼ばれる場所は、潮が引けば干上がって、夏は暑くて冬は寒い。潮が満ちれば強い波が砕けて、常に白波に洗われるような環境です。
そんな岩場に頑張って暮らす、とても小さなカニがいます。メガネオウギガニと、ヒメメガネオウギガニ。メガネオウギガニは、甲羅が1cmくらいの赤茶色。目と目がとても離れて、ちょっと面白顔です。潮の引いた岩の上を歩いて、小さなハサミで海藻などをちまちまと食べています。
ヒメメガネオウギガニは、さらに小さいカニです。体は白っぽく、ほとんど巣穴から出ません。巣穴の大きさは3〜4mmで、私たちの指先の爪より小さい。その穴から、いつも外の様子を見ています。そして何と言っても面白いのは、穴に何かが近づくと、顔とハサミでぴったりフタをするところ!穴の奥に隠れるのではなくフタをして、顔を押しても引っ込まないのです。
巣穴の周りは海藻がきれいになくなっていることが多いので、おそらく手の届く範囲の海藻をつまんで食べているのかな。でも一体巣穴で何をしているのか、外に出てくることがあるのか、オスとメスの出会いはどうなっているのか、まだまだ謎だらけ。
ちなみに、学名にある「eremita」とは、一人ぼっちという意味。巣穴に一人暮らしの小さなカニが、今日もひっそりと空を見上げているのです。
Vol. 19 ヒメメガネオウギガニ
Dacryopilumnus eremita
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:メガネオウギガニ科 Dacryopilumnidae
● 属:メガネオウギガニ属 Dacryopilumnus
動画撮影:
ヒメメガネオウギガニ 2019年6月19日(恩納村・久良波)
メガネオウギガニ 2017年8月4日(糸満市・大度)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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