そうめんにリボン、お茶碗みたいな形も
今年の旧暦3月3日の浜下りは、新暦の4月3日の日曜日です。暖かくなった海にお出かけしてみては? 海の生きものも、春になって恋をする…かどうかはわからないけれど、卵を産む季節になります。

貝、特に巻貝は、いろいろな形の卵を産みます。ティラジャー(マガキガイ)は、小さな卵の粒が入ったねばねばのひもを砂地に産み出し、砂にまみれたかたまりを作ります。ひも状の卵と言えば、アメフラシの仲間。黄色や緑の「海そうめん」と呼ばれる卵のかたまりが、浅瀬の海草などに絡まっているかも。ウミウシの卵は、リボン状。どうやら、中心から左回りの渦巻き状にリボンを産みつけていくみたい。ちなみに、アメフラシやウミウシは、貝殻を持たなくなった巻貝の仲間なんですよ。
イモガイの仲間は、卵の入ったカプセルを岩の裏側などに産みつけます。どうやってこんな形のカプセルを作るのか、とっても不思議ですね。
岸近くの岩場にいるカラマツガイの仲間は、黄色い渦巻きの卵を産みつけますが、こちらは中心から右巻き。



砂地に潜るタマガイの仲間は、「砂茶碗」と呼ばれる卵塊を作ります。砂つぶと自分の粘液と卵で、壁をぐるぐると左回りに作っていき、出来上がったら砂の上にこれを残して、自分は砂に潜って行ってしまいます。真ん中の穴の大きさが、お母さんの貝殻の大きさというわけです。
ユニークな貝の卵いろいろ、春の海辺で探してみてくださいね。
Vol. 50 マガキガイ
Strombus (Conomurex) luhuanus
● 目:盤足目 Discopoda
● 科:ソデボラ(スイショウガイ)科 Strombidae
● 属:ソデボラ属 Strombus
動画撮影:
マガキガイ 2019年2月21日(南城市 玉城)、2019年4月7日(読谷村 宇座)
ミドリアメフラシ 2010年3月28日 (浦添市 伊奈武瀬)
タツナミガイ 2011年3月18日、2014年3月17日(浦添市 カーミージー)
ウミウシの卵塊 2015年4月20日(浦添市 カーミージー)
クロフモドキ 2016年7月2日(浦添市 カーミージー)
コウダカカラマツ 2021年11月13日(浦添市 カーミージー)
ホウシュノタマ 2015年7月17日(浦添市 カーミージー)
砂茶碗 2011年8月15日(浦添市 カーミージー)
リスガイ 2016年7月2日(浦添市 カーミージー)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。沖縄の海辺を考える「里浜22」や、温暖化対策に取り組む「ゼロエミッションラボ沖縄」でも活動中。
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