【動画】岩の上の定位置に戻る賢いやつ カラマツガイの仲間たち<沖縄・海の生き物たちVol.17>


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貝の床そうじ

海岸の乾いた岩の表面に、ぴったりとくっつくクバ傘のような形の貝を見たことがありますか?カサガイやカラマツガイの仲間です。カサガイとカラマツガイは、貝の中では全然違うグループですが、同じ場所で同じような暮らしをするうちに、同じような形に進化してしまったようです。大雑把に言うと、貝殻が滑らかで、上から見るときれいな楕円形ならカサガイ類。カサガイの仲間で、水鳥の足の水かきを思わせるような形の貝殻だと、ウノアシ類。一方、傘のてっぺんから放射状の筋が盛り上がって伸び、縁がギザギザしていれば、カラマツガイ類です。カラマツガイ類は、実は陸上に住むカタツムリに近い仲間です。

岩の上に暮らす彼らには、決まって居座る定位置があります。そこは、自分の貝殻の形にくぼみができてしまうほど。食べ物は、岩の表面に生える微細な藻類。彼らは、時々まわりを歩き回っては、口にあるやすり状の歯舌(しぜつ)で藻類を削り取るようにして食べます。そして、辺りを一回りしたあと、ちゃんと定位置まで戻って来るんです。決まった道路があるわけでもないのに、貝がどうやって岩の上の地形を覚えているのか、不思議ですね。どうやら、自分の粘液の足跡をたどっているらしいんですが…。

そして、この貝たちは結構きれい好き。自分の定位置は自分のお家の床のようなもの。よけいな砂つぶがあると居心地が悪いらしく、ちゃんと掃除をします。砂つぶを外に追い出してからくぼみにぴったり収まる様子は、小刻みな車庫入れをしているみたい。この貝、案外几帳面なのかもしれません。

Vol. 17 カラマツガイの仲間

Siphonaria spp.

● 目:基眼目 Basommatophora

● 科:カラマツガイ科 Siphonariidae

● 属:カラマツガイ属 Siphonaria

 

動画撮影:カラマツガイの仲間 2019年6月19日(恩納村・山田)

動画撮影・編集&執筆

鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)

琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。

鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)

東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。

 

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