不安に入り込むもの モバプリの知っ得[186]


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今月8日、奈良県内の路上で選挙演説中の安倍晋三元首相が、犯人自作の銃で背後から撃たれて亡くなる事件が発生しました。

安倍氏の政治的な評価とは別に、歴代最長の総理大臣が選挙演説中に銃撃され亡くなるという事件に胸を痛めた方は多いでしょう。さらには銃撃の瞬間の映像をSNSやメディアで目にしてショックを受けた方もいるのではないでしょうか。

メディアは報道をするのが仕事ですので、繰り返し銃撃事件についての報道を行います。今回のような大事件の際は、多くのメディアが長時間使い、熱心に報じます。

社会調査支援機構チキラボの調査によると、今年2月からのロシアのウクライナ侵攻の際に、「戦争についてのメディア視聴量が多いほど、抑うつ・不安感が高い人が多かった」と報告されています。

今回の銃撃事件も同じように、メディアから多くの情報を得ることで抑うつ・不安感が増す可能性があるので、適切な距離を取らなければいけません。

社会調査支援機構チキラボ-「社会抑うつ度調査」 2022年5月分析結果

不安が増すことが分かっていながらも、アプリやSNSでニュースを求め続ける心理を「ドゥームスクローリング」と呼びます。不安だから真実を知りたい、誰かとつながりたいという気持ちからニュースを読みあさり、SNSを絶えず更新する。しかし、不安感は増していくばかりで結局スクロールがやめられない…という悪循環に陥るということです。

パンデミック(世界的大流行)・戦争・大災害・有名人の訃報など、ショックを受けるセンセーショナルなニュースが飛び出した際は「ドゥームスクローリング」のスパイラルにハマらないよう、意図的にSNS・ニュースアプリをスマホから削除することも必要になるかもしれません。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

ストレスが高まった際、自分自身で対処するちょっとした行動を「コーピング」と呼びます。

コーピングとは モバイルプリンスの知っとくto得トーク[183]

コーピングは「温かいお茶を飲む」「拳をぎゅっと握る」など、すぐに実践できる些細なものでOKで、自分が好きなものをたくさんリストとして用意してください。

「部屋で実践できるもの」「職場で実践できるもの」など、コーピングを実行できる場所に多様性があれば、利用シーンが広がります。

大きな事件が発生した際は「ドゥームスクローリング」ではなく「コーピング」と自分に言い聞かせて心の健康を保つよう努めてみましょう。

今回の銃撃事件、容疑者は「カルト宗教で家庭が破綻し、カルト宗教とつながりのある安倍氏を狙った」と供述しているとのことです。

いかなる理由があれど、今回の銃撃を正当化することはあってはなりません。私たちはこうした暴力に「認めない」というメッセージを社会として出さないと、暴力が連鎖し、似たような事件が続き安心して暮らすことができない社会になってしまいます。

今回の銃撃事件により、奇しくも注目されることとなった「カルト宗教」ですが、人々の不安に入り込み、洗脳していきます。(不安がない人にも入り込むことはあるのでさらなる注意が必要ですが)

カルト宗教だけでなく、陰謀論・詐欺同然のビジネスなどもSNSなどを活用し、不安でつながりを求める人々に入り込み、勢力を拡大しています。

スマホの使い方ひとつで人生が良くも悪くも大きく変わってしまう時代、新ためて自分の心の健康状態と使い方のバランスを考えながら使う必要があるでしょう。

~ 解説 ~

ショックを覚えた方も多いのではないでしょうか … 何度も繰り返し見かける・接触することで好感度や関心が高まることを広告業界などで「ザイオンス効果」と呼びます。テレビ等のメディアでよく見かける政治家・芸能人・スポーツ選手などは、例え面識が無かったとしても事件報道などの残念なニュースを見ると私たちは共感して過度にショックを受けることがあります
 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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