猛暑と、サンゴと、私たちの関係 しかたにさんちの自然暮らし(2)


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 毎日暑い日が続いていますね。今年の夏は、いつもの年より暑くなるとの予報。海の中でも、世界的に有名なグレートバリアーリーフのサンゴが、暑さのためにすでに広い範囲で白化しています。沖縄のサンゴもちょっと心配。なぜって、熱帯の海に暮らすサンゴは、もともと耐えられる暑さギリギリの所で成長しているからなんです。

2013年、イノーのハマサンゴが暑さで白化。体から茶色い褐虫藻が抜け、ピンクのポリプの下の白い骨格が透けて見える。

 これは、体内に共生する茶色い藻(褐虫藻)にたくさん光を当てて、できるだけ多くの栄養を作ってもらいたいから。サンゴは自分でプランクトンなどの餌をつかまえたりもするけれど、昼間に褐虫藻が作った栄養をもらって大きく成長しているんです。光が差し込む透明な海でなければサンゴが生きられないのも、また、暑いのを我慢して、できるだけ水面に近い所でサンゴが成長しているのも、全ては褐虫藻のため。限界ギリギリの場所で暮らすサンゴは、夏の平均水温が1~2度高くなるだけで、ストレスで褐虫藻を吐き出したり消化したりして、白化してしまいます。

 ところで、例年は梅雨明け前に1~2個の台風がやって来るのに、今年は来ませんでしたね。台風の強い風は海をかき混ぜて、深い所の冷たい水をサンゴ礁まで届けてくれます。この台風のおかげで、サンゴも暑い夏を乗り切ることができるのです。台風が少ないのを喜んでばかりもいられません。近年増えている超強力台風は困りますが、水不足にならない程度に雨を降らせ、深い所まで海水をかき混ぜて海を冷やしてくれて、被害は少ない、そんな都合のいい台風が来てくれないかな~。

サンゴと同様に、褐虫藻を持つシャコガイも白化していた(2013年)。

 サンゴはともかく、私たちが涼しく暮らすためには、家でも車でも職場でも、クーラーを付けっぱなし!っていうのが1番簡単です。でも、クーラーはたくさんの電気を使いますよね。車だったら燃費が悪くなる。電気代も気になりますが、クーラーを動かす電気を作るために、発電所でたくさんの燃料を燃やして温暖化ガスを増やすのは、長い目で見ると逆効果じゃないかな。近年台風が強力になって来たのは、地球温暖化の影響とも言われています。

 家々のベランダに並んだクーラーの室外機からは熱風も吹き出るし、何だかあまり解決になってないような…。なお、せめてクーラーを使う時は、扇風機を同時に使って隅々まで風を行き渡らせると、キンキンに冷やさなくても十分お部屋が涼しく感じられますね。うちでは夕食が終わると、天井の蛍光灯を消して、壁際にあるLED電球だけにしてしまいます。この間接照明で天井が照らされると、落ち着いたホテルの部屋のような雰囲気。くつろぐには十分な明るさです。LEDは電気代も安いし、ほんのり柔らかな明かりは心も落ち着いて、よけいに涼しく感じられます。暮らしの中をちょっとだけ見直して、エコでも夏を気持ちよく乗り切る工夫を探してみてくださいね。

鹿谷法一(しかたに自然案内)
 しかたに・のりかず 琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島生まれ。海に憧れて沖縄に来て、もう30年以上。専門は甲殻類。生物の形と機能の関係に興味がある。趣味は本とパソコンとバイクいじり。植物を育てるのも好き。