「今だからこそ、働き方改革」 りゅうせき商事社長 富原加奈子さん(1) DEAR WOMAN

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 仕事、家事、育児、そして自分の成長-。女性が働き続ける中で直面する職場の悩みやワークライフバランスの課題は尽きません。世間は「女性活躍」と言うけれど、「活躍したくてもそんな環境じゃない」「管理職なんかになりたくない」「これ以上何を頑張れというの?」と愚痴りたくなることも。

 道を切り開いてきた先輩たちも私たちと同じように迷ったり、悩んだりしてきました。そんな先輩たちにインタビューする「DEAR WOMAN」。今回は、沖縄県内で常に女性登用をリードしてきたりゅうせきグループの富原加奈子りゅうせき商事社長にお話を伺いました。


生産性を上げるツールを活用



すっきりしたオフィスで。「整理収納が仕事にもつながります」と語る富原加奈子さん(右)=浦添市勢理客のりゅうせき商事

―りゅうせきグループは女性登用や仕事の効率化が進んでいるイメージがあります。りゅうせき商事さんでは、最近iPadを使ってペーパーレスに取り組んでいるとお聞きしました。

 iPadはすごく助かっています。管理者会議でペーパーは1枚もありません。以前は会議といえば、資料を人数分プリントする、配る、ファイルする、もらった資料の情報管理と、これだけの作業がありました。今は、資料もiPadで見るから、「渡す」ということもなく、全部iPadで見て確認できる。

 議事録も以前は会議の後に作って、メールでみんなに「確認して下さい」と送っていました。今はその場で作成して、会議の終わりの数分にみんなで確認し、修正する部分があれば修正したり、期限がある仕事を確認したり、その場で情報を共有します。「次の会議までに報告が欲しい」など期限を決めた仕事は、赤文字にして忘れないようにできる。次回はその議事録の赤文字にした所の報告から始まります。すると、早く進める仕事がどんどん進められます。この方法が定着して会議自体がリズム良く進み、だいぶ時間を短縮できるようになりました。議事録を作成する人の負担も減りました。

―確かに、会議って、時間や作業が増えます。自分の仕事も片付かないのに、会議資料を作って印刷したり、議事録を作る作業が増えたりする。そこに時間を取られることは、男も女も共通しています。内容も「会議のための会議」だったり(笑)。その改善は大きいですね。

 まず、会議の時間を短くしたかった、というのもあります。以前は管理者会議は午前7時半から始まっていました。それって、小さな子どもがいたりする人が参加するのはとても大変な時間。だから女性が会議に出られないということもあるわけで。

 今は、通常の始業時間の午前8時半に始めています。終わる時間は決まっているのでその分、会議の時間は短くなり、中身は濃くなったと思います。みんなが会議を短くしようと思ってくれて、その場で決着させて来週には報告しなくちゃ、という流れもできています。

 働き方のスタイルはどんどん変わっていて、必ずしも「そこにいなければいい」というわけではなくなっていますよね。それ以上の質で仕事ができるなら、必ずしも会社にいなくてもよしという時代ももうすぐだと思います。現場への直行直帰、日報もiPadなりスマホから入力できるようになる。当社はまだ100%というわけではありませんが、環境は整いつつあります。

 新しいことにチャレンジしながら、それを成長させていく、というんでしょうか。会社毎、個人毎にも違うとは思いますが、そういうことをどんどん受け入れるようにならないと、変わらないんですよね。それって大事だと思うんです。私自身、「新しモノ」好きなんです。

整理収納が仕事につながる



コンサルを入れて、全社で取り組んだ整理収納。

―ご自身が今のようなペーパーレスやiPadの活用、会議の時間短縮などを始めたのはいつからですか。変えようと思ったきっかけは?

 社長に就任してからなので2014年5月から。それから少しずつ少しずつ、みんなで一生懸命、一緒にやってくれました。企業ファイリングも取り入れてオフィスもすごくきれいになった。「ファイリングのためのファイリング」ではなく、本当に必要な情報を使いやすくするためのものですから。

 仕事って、生産性が上がらないとだめ。時間を短くしよう、残業を減らそうといっても、その手段がないとできません。整理収納とか、まず足元のことをやることでみんなの時間短縮につながったとき、結果的にものすごく大きな時間になります。個人の整理も上手になる。

 会社がすべき事と、個人が頑張る事、それぞれあると思います。そして、どちらもやらないと働き方を変えたり、生産性を上げたりすることはできません。会社がすべき事といえば、例えばPOSを入れて手作業をなくしたり、iPadを使って会議の時間が短くしたりといったハードへの投資や仕組み自体を変えることなどがある。

 個人の生産性をどう上げるか、残業を減らさないと休みも結局取れない。そこからやろうと、みんなで一緒に考えて取り組んできた結果、環境はだいぶよくなりました。

 個人的に整理収納にはまっています。整理収納アドバイザー1級とコンサルタントの資格を取りました。整理収納は、家庭から始まっているけど、仕事にも直結します。きれいに収納して取り出しやすくするとか、モノを持つか持たないかという判断が必要になるんですが、仕事も、この資料を作るべきかそうでないか、そもそもこの仕事をやるべきかどうかなど、判断する基本は一緒だと思います。どれを最初にやるか、優先順位をつけて頭の整理ができるのは、時短や仕事の生産性を上げる手段につながります。


働き方、とは?



―こういった改善は、ご自身の経験が反映されているのでしょうか?富原さんはいつも笑顔ですが、仕事や育児でもがいていた時期はなかったんですか?

 もちろん、今ここに行き着いたのは、自分がそうできなかったからですよ。仕事と家事・育児の両立というが、私は悪いモデルだと思っているので。昔は、女性のロールモデルがいない分、男性の働き方をモデルに仕事をしていたので、時間で勝負していました。目の前で仕事している男性を見て、自分が同じ役割が来たとき、どうしても同じようにしてしまう。「勝負」って言うとおかしいかな、時間でこなしてしまっていたなと。

 でも、それは決して両立できていた状態ではなかったです。だから、すごく反省しているし、あの時代はやむを得なかったということもあったけど、後輩の皆さんには絶対、そうじゃない環境を作りたい。だから、今、経営という立場を頂いているので、自分の経験と経営者という立場の両方が見えるとすれば、まずそこからやりたいなと。


色分けされたファイルで、資料もすっきり。ファイリングや資料探しに時間を取られることもなくなりました。

 琉球新報さんの仕事の余白を書かせてもらっていた時に行き着いたんですけど、「女性が今の組織や現状に合わせるのには無理がある。それは今までの仕組みしかないから」。現状でどうにか上手にやっていこう、というのも必要だけど、これからやらなければいけないのは、どうすればうまく働いていけるかを、本人も考えて、その考えたことを「発する」ということなのかなと思います。

 実際、会社も助けになることをしたいんですよ、でも何をしていいか分からない。会社がいいと思ってやったことが裏目に出ちゃうっていうこともある。だから、「なんで管理職になってほしいと言っても、断るの?」という事態が起きてしまう。その結果、「女の人はやっぱり」みたいになっちゃう。

 根本的に、これまでの男性社会の働き方が普通じゃない。今、「働き方改革」と叫ばれているけど、これは女性だけの問題じゃなくて、「人が働く」ということ自体が見直されなければと思います。



〈プロフィル〉

 富原 加奈子(とみはら・かなこ) 1956年生まれ、久米島町出身。獨協大学卒業後、23歳で琉球石油(現りゅうせき)入社。取締役事業開発本部長、りゅうせき常務などを歴任。趣味は旅行と映画。最近はフランス、ドイツ、イギリスなどヨーロッパから、国内の温泉まで旅をする。好きな言葉は「初心忘るべからず」。入社後すぐに、りゅうせき創業者で参議院議員も務めた稲嶺一郎氏の秘書を3年半経験。「今になって稲嶺一郎さんの言葉をよく思い出します」



~ 聞き手 ~

 座波幸代(ざは・ゆきよ)  琉球新報style編集部。ダイバーシティーに興味があります。

 





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